◆会社だけの問題ではなかった
「自分たちのケアをしない女性がいる、っていうのが彼らには衝撃だったようです。ケアをしないだけでなく、モノを言う女性なんだから、想定外もいいところだったのでしょう」
部署全体会議が終わった後、モモエさんは本社のハラスメント相談窓口に電話をした。この会社には、はっきりとした男尊女卑の価値観がある。ここでいつまで働くのかな、という気持ちは、うっすらとではあるが消えたことがなかった。
そして、それは会社だけではない。そもそも地域にその価値観が根付いていて、会社はそれを反映しているだけともいえる。
地元を出たい。これもやはり消えることなく長いあいだ胸に巣食っていた願望だった。このあたりでは、女性は誰かに所属することを求められる。生家に所属するか、結婚して夫に所属するか。そうなると、自分で何かを決めることは歓迎されない。
「20代のころ、結婚を考えた男性がいたんです。彼と結婚したらどんな人生だろう、と思った瞬間、こんな情景が浮かんできました」
夫の職場と夫の実家の中間ぐらいでマンションを賃貸し、モモエさんは仕事を辞めて家庭に入る。1、2年経ったら「子どもはまだか」と周囲からせっつかれる。無事子どもができたら、次は「2人目はまだか」。2人目が生まれたら「家はどうするんだ」と言われて、夫の地元で家を建てるーー。
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