咲村良子連載コラム第2回
「ヴィランの花道 ~咲き乱れ 散りゆくままに~」

 あーどうしよう。いよいよ決まった。

 12月26日、プロレスの聖地、後楽園ホールで女子プロレスの生き証人、高橋奈七永選手とやっちゃうよ。

 ついにきた! やべゃぁ。滾る。

 同時に、迫れば迫るほど自分の至らなさを痛感して不安が募る。

 こう見えてナーバスなぴえん女子なんです。

 器用な質ではないのは自分が一番よく知ってるから理想に届かない自分に嫌気がさして逃避衝動に駆られて、寝れなくなるし泣きたくなる。

 必死に練習をしてきたし、体力も筋力も限界まで追い込んできた。でも、その日が迫ってくると逃げたい衝動に襲われる。

 私は生理前より本番前の方が重いタイプ。機嫌悪くなるし、情緒不安定爆発しちゃう。当日まで存分にくよくよ、ねちねち、うじうじ、ぐずぐずしちゃう……。

 だけど、思い悩めば悩むほど、当日の瞬間が晴れ渡る。

 私は根っからのハンパモン。

 あらゆることをかじり、あちこち手を付けちゃう。そんな私が相対するのは骨の髄からのプロレスラー、高橋奈七永だ。

 高橋奈七永はマリーゴールドの根幹ともいえる選手。

 デビューは1996年、彼女が高校1年生のとき、学校を中退してプロレスの道を選んだらしい。

 ほぼほぼ私の生きてきた時間をプロレスに捧げてきた人ってこと。

 この人がマリーゴールドにいなかったら私は他の団体からデビューしていたかもしれない。一途な彼女の背中は、何もわからない私にも「この人がいるなら」と思わせてくれた。

 高橋奈七永選手が電撃的に引退を明かした12月13日、私はデビュー戦を発表した。これは新しい時代の象徴になるはず。高橋奈七永選手にはいつか、「咲村良子のデビュー戦は私がやってやったんだ」と自慢させてやる。

 プロレスは「エンタメだから」と揶揄されることもあるけど、そんな薄っぺらいところで戦ってないのが面白い。

 ちゃんと名のある選手は、強い。私は喧嘩で勝てるだろうと思う相手はプロレスラーとして尊敬してない。私の野生が勝てると思った瞬間に本能的にナメてるし、スパーリングでも意地でも負けん。