町をうろついていると、たまに「3回食べてみてください 絶対ハマります」みたいな看板を出している飲食店を見かけることがあります。個性の強いスパイスカレーなんかを出すお店に多いような気がしますね。そういうのを見ると、「じゃ3回タダで食べさせてよ」という気分になるものです。
カレーはタダじゃないけど、ドラマを見るのはタダですからね。『全領域異常解決室』(フジテレビ系)、第1話では気に食わない部分もあったけど(モザイクスプレーな)、2話、3話と進むうちに、これはなかなかいいじゃないかという気分になってきまして、第5話の終わりで興玉さんが「僕も、神です」と言ったところで完全にハマりました。
おもしろかったし、クール中盤でのドラマそのものの領域展開には興奮しましたね。なかなか、ドラマを見るという行為では得られない類の体験だったと思います。
最終回、振り返りましょう。
あらすじ紹介はもういいでしょう
「事戸渡し」という事象の設定がめちゃくちゃ秀逸なんですよね。
人間の体を借りて生きている神様が「事戸渡し」を受けると、神様としての記憶を失って人間になる。
「事戸渡し」を受けた神様が借りていた人間の体が死ぬと、その神様は消えてしまう。ついでに、その体も遺体としてその場に残ることなく、消失する。
神様のことを知った人間は、必ず「事戸渡し」を受けて神様についての記憶を消されなければならない。
「事戸渡し」は、神様自らが行って自分の神様としての記憶を消すこともできる。
「事戸渡し」を行えるのは神様だけだが、飛鳥時代に一人だけ「事戸渡し」を習得した人間がいる。
このあたりが矛盾なく物語に作用して、神様という存在の持つ力と、その存在の儚さ、さらに人間の記憶、つまりは「人を大切に思う気持ち」が消えていく切なさを見事に語り切っていたなと感じます。
ここに「不老不死」という設定が加わることで、物語の展開できる幅が大きく広がっている。第6話、不老不死の美容家が神様と恋をして、記憶を消されても「必ず、必ず、(来世の)彼と出会ってみせます」と言ったシーンなんて、この設定の真骨頂でした。