「年末は仕事納めで、取り上げるニュースが激減します。家にいてテレビを見る人も増えるので、ニュース番組を特番で埋めるようになるんです。とはいえ、昨今潤沢に制作費をかけた番組はつくれないので、日頃やっている番組を引き伸ばす形にするか、昔の人気番組の復活として、特別感を出しつつ新しい企画が特にいらない内容で構成する。SPといえば、この2つのどちらかの制作方法が多いです」

 鎮目氏によれば、SP版は「番組制作側だけの都合なら、メリットが多い」のだという。

「仮に1時間番組が2時間のSP版になったからといって手間も制作費も倍には増えません。放送回数が少なくなるので、スタッフも少し休めます。いつもより長い放送時間が確保できるので、普段放送しきれなかったものやボツになったものなど、“リユース”ができるというメリットもあります」

 もちろん、SP版だからこそできることはあるだろう。しかし、いかにも引き伸ばしたような“薄味”のつくりになるケースがあるのは否めない。さらにいうなれば、局からそもそもの視聴者が離れてしまう可能性もある。

「SP番組が放送されるということは、何らかのレギュラー番組が犠牲になっているので、多用すると視聴習慣を潰し、視聴者が離れてしまう危険性があります。取り組みとしてはチャレンジングでユニークだと思いますが、SP番組の質を上げないと、視聴者が戻ってこなくなるリスクもあると思います」(同前)

『テレ朝年末30日連続スペシャル祭り!!』とは、たしかに豪華さをアピールするものだが、その実情は必ずしも豪華ではない。コスパを求めざるを得ない現在の民放各局を取り巻くさまざまな状況のなかで編み出された、空虚なお祭りで終わらないといいが……。

(取材・文=サイゾーオンライン編集部)