「この場合、4億円の賠償命令に対する控訴審について、旧日弁連規程に基づいて弁護士費用(着手金)を請求して受任する弁護士は、まず、いません。すなわち、『負けるとわかっていても控訴審をやりたがって、1500万円を請求する弁護士』は、まずいないということになります。

 地裁判決をひっくり返すのは難しいので、まず、クライアントにはこれをしっかり理解してもらい、そのうえで『100万円~200万円程度の着手金をもらい、賠償金額の減額に成功した場合に、着手金減額分を上乗せして請求する』というのがたいていの場合です。なぜなら、1500万円もの着手金をもらっておいて判決が変わらなかったら、クライアントと揉めるのが目に見えているからです。

 なお、地裁を担当した弁護士以外に、いわゆるセカンドオピニオンとして別の弁護士の意見を聞くというのは大賛成です。しかし弁護士界隈では、クライアントから『他の弁護士に聞いたところ、こうやればいい、こういう風に(勝てるなど)言っていたので、これでやってください』などと言われるのは非常に嫌がられることなので、セカンドオピニオンに意見を聞くなら、その弁護士に控訴審を担当してもらうくらいの心構えが必要です」

(文=佐藤勇馬)

■協力=山岸純/弁護士・山岸純法律事務所代表

時事ネタや芸能ニュースを、法律という観点からわかりやすく解説することを目指し、日々研鑽を重ね、各種メディアで活躍している。芸能などのニュースに関して、テレビやラジオなど各種メディアに多数出演。また、企業向け労務問題、民泊ビジネス、PTA関連問題など、注目度の高いセミナーにて講師を務める。労務関連の書籍では、寄せられる質問に対する回答・解説を定期的に行っている。現在、神谷町にオフィスを構え、企業法務、交通事故問題、離婚、相続、刑事弁護など幅広い分野を扱い、特に訴訟等の紛争業務にて培った経験をさまざまな方面で活かしている。山岸純法律事務所