猶予された期間の保険料を「追納」しない場合、つまり10年以内に後払いしない場合、その期間分は、年金の計算対象から外れるため、将来の年金受給額が減ります。
20歳から60歳までの40年間(480月)保険料を納付した方の場合、2024年度(令和6年度)新規裁定者の年金額は満額で81万6000円です。1月でも納付していない期間がある場合には、月数に応じて減額されます。
例えば、2年(24月)間、猶予分の保険料を支払わなかった場合には、
81万6000円 × (480-24)÷ 480 = 77万5200円となり、満額受給額との差は年間で4万800円少なくなる計算です。
月額でいえば3400円となり、わずかに思えるかもしれませんが、65歳以降生涯にわたって受け取ることのできる公的年金であることをふまえると、意外と影響は大きいといえるのではないでしょうか。
「学生納付特例制度」を利用しないという選択肢もある
大学在学中に「学生納付特例制度」を利用して、国民年金保険料の納付が猶予されていた場合、猶予された保険料は支払わなくても、延滞金などの罰則はなく、即座にペナルティーが発生するわけではありません。ただし、放置すると、将来的に年金額の減額といった不利益が生じる可能性があります。
厚生労働省の「国民年金被保険者実態調査結果(令和2年)」によると、学生のうち「学生納付特例制度」の利用者は63.9%と高い割合を占めているのが現状のようです。学生だから免除されているわけではなく、所得がない状況であることをふまえて社会人になるまで猶予されているということを認識しておきたいものです。
給与から学生時代の国民年金保険料を捻出することは、負担と感じることでしょう。しかし、まだまだ先と思いがちですが、将来の年金受給額に影響することを理解したうえで追納することをおすすめします。なお、追納した金額は、社会保険料控除の対象となるため所得税や住民税軽減の効果があります。
学生納付特例制度は、所得のない学生にとって安心の制度であると同時に、社会人になったときの負担を伴う制度でもあります。現時点で学生である場合には、数年後の負担を回避するために、学生納付特例制度を利用せず、納付するという選択肢もひとつとして考えてみてください。