すると今度は星河電器のエース澤田(関口メンディー)が就職を斡旋するという、とんでもない飛距離のスルーパスを出してきます。さすがに星河の面接ではまともな対応をしていた結ですが、こんなのは成長でもなんでもないからね。常識の範囲です。

 あくまで結を「助ける側」に置き続けたい、手柄を与えたいという物語のスタンスによって、2年間の専門学校生活もまた意味のないものになりました。

 この2年間は、ド素人の結がプロの栄養士になるまでの2年間です。「ギャルが栄養士になる話」の「なる」の部分です。「なる」に値する試練が、どうしたって必要だったはずなんですが、何もなかった。だから「なった」という瞬間に重みがない。

 主人公の少女が高3のときに抱いた夢が叶った瞬間ですよ。その瞬間がこんなに無感動な“青春グラフィティ”は、ちょっと記憶にないよマジで。

(文=どらまっ子AKIちゃん)

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