ここで、いったん「美しい着付け」を確認しましょう。

雑誌『美しいキモノ冬号』の巻頭特集の女優・伊東美咲さんの訪問着姿は、裾は草履の「ツボ」という足の指で挟む部分にかぶり、手首のグリグリは袖で隠れています。礼装の場合、このぐらいの長さが推奨されます。

◆着物姿が美しく見えないポーズと手ぶらが、残念ポイントを加算

林官房長官のXのツーショットのお写真は、ポーズも残念すぎます。着物が美しく見えるショットは少し右を向いた斜めの姿勢。特に訪問着は着ている人の左上半身に文様が描かれているので、しっかり見えるように斜めの姿勢を取るのが好ましいです。また着物姿は洋装と異なり、四肢を動かしての肉体を駆使したポージングの幅が狭い衣装です。

そのため、「手持ち無沙汰な印象」を緩和するために、ハンドバッグやクラッチバッグを活用するのがおすすめです。「おはしょりの仕上がりがイマイチなときはバッグで隠す」は庶民にも使えるテクニック。左半身を少し前に出したポーズで、左手にクラッチバックを持つと「手持ち無沙汰な印象」がなくなります。

今回はご夫婦でのツーショットなので、「ひな人形」や「婚礼写真」に準じて夫が向かって左側、妻が右側の立ち位置のほうが見た人に与える「違和感」を軽減できたのではないかと思いました。とはいえ、ジェンダーギャップ指数が156か国中、118位(2024年)のわが国ですので「私たち夫婦は性別役割分担にはこだわっていません」という意図が込められていたのかもしれません。だとしたら、差し出がましく失礼いたしました。

◆庶民も押さえておきたい「ドレスコードと配偶者とのバランス」

最後に、宮中行事に参列する際の着物のドレスコードを、林官房長官の装いをベースに調べました。モーニングをお召しなので、配偶者が着物を着る場合は「色留袖」または「五つ紋の訪問着」とありました。「色留袖」なら、家紋の不一致問題を気にせず気軽にレンタルできるので、庶民でも心強いです。