ーー正月休みは楽しみが多いのに、意外なことに事故落ち(懲罰を受ける)する受刑者が多いという話を聞いたことがある。そうしたことが一因になっているのか?

B氏 その通りやろな。食べ物がええ分、揉めやすい。ちなみに正月休みの間に舎房から出れんのは、12月30日と1月2日の2回の入浴だけや。このときはバスクリンが浴槽に入ってて、えらいあったまるんや。バスクリンで喜べるなんて懲役ぐらいやど。正月の風呂上がりはどの懲役もバスクリンのええ匂いさせてな。舎房に帰ったらパジャマで布団に入ってテレビだって観れるんや。1日2回の点検もパジャマのまま受けてええのは、正月休みくらいやった。

 そんな時になんで事故落ちが多いかゆうたらな、物のやりとりや。刑務所の中でメシを残すのは別にかまへん。カラアゲゆうて、回収のときに残飯で出したらええだけや。でもいくら嫌いなもんでも、他の懲役にやったらあかんねん。担当に見つかったら不正授受の科で1発で上げらて取り調べや。担当(刑務官)らも、正月に特別に配られるホヤキで不正授受やるのを分かっとるから、隠れて見とんねん。で、見つかったら、「動くな!」て怒鳴られてな、もう犯罪でも犯したくらいな勢いで刑務官が大勢やってきよんねん。それで罰を何日座る(懲罰を受ける期間)か決める審査会では、刑務官からボロカスや。特にもらったほうや。「オドレはコジキか!」ってクソカスに言われんねん。そうなったら楽しかった正月休みが一転して、テレビも見れん独居に変わり、年明けから懲罰で、懲罰が明ければ、工場も変わって一からやと思うと、新年早々うんざりするわな。

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 どの受刑者も正月を楽しみにしている中、男稼業に生きるヤクザも同じだ。特に食べ物がありがみを感じられる時なのだろう。シャバでは甘いものが苦手な者でも、中では必ず甘党になるというのは日常の粗食が関係しているのだろうか。最後に元組幹部は、刑務所の中の注意点として、こう付け加えた。