かい:それほど、なかったかな。こっちから仕掛けようというか「外の世界に連れ出してほしい」とメッセージを送れば、どこかで引っかかって「会えるんじゃないか」と期待はしていました。

えみ:仕事中に何度か、ふざけながらデートに誘ってくることはあったんです。でも、私がそのたびに断るものだから、内心ではかわいそうとも思っていて……(笑)。初デートで見た映画はレイトショーで、その日、最後の回だったんです。上映時間までは車内で待ちながら、初めてプライベートでじっくりとしゃべって、年の差を感じなかったし、おたがいのフィーリングが合うと感じていました。

◆「まだ人を好きになる感情が残っていたんだ」

ウェディングフォト
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――映画館の初デートで距離が縮まり、交際がスタート。でも、結婚までは考えられなかったそうですね。

えみ:かいちゃんは受け入れてくれたけど、当時、私は42歳のシングルマザーでしたし、私と付き合って「かいちゃんのご両親がどんな思いをされるんだろう」と、迷いがあったんです。結婚しても出産できる年齢ではないし、かいちゃんの周囲にいる人を悲しませるわけにはいかないと、常に思っていました。

――恋愛や結婚においては、ためらいもあったのでしょうか?

えみ:子どもたちを育てるために、とにかく必死だったんです。一生懸命に稼いで、経済的な余裕を持てないと子どもたちの将来の選択肢を狭めてしまうと焦りもあって。当時、信頼していた上司からは「今が頑張りどきだよ」と励まされていました。かいちゃんに今も「当時は仕事のことばかり考えていたよね」と言われるほどだったんです。

でも、勇気をもって付き合いはじめてからは、仕事人間だった私にも「まだ、人を好きになる感情が残っていたんだ」と気が付いて、子育ても仕事もよりいっそう頑張れるという、充実感も得られました。

かい:交際がスタートしてからは毎回、別れ話になっていたよね。えみからはよく「子どもが産めへんから」とか「親に孫を見せられへんから」と、話を聞いていたんです。そのたびに僕は「親は子どもの幸せに一番に考えてくれるって」と返して、説得していました。