今考えたら、なんと贅沢(ぜいたく)なことだろうと思いますが、90年代、服作りの現場で働く若者は皆こんな感じで、さして珍しいことではありませんでした。
このテイラード・ジャケットは、肩パッドなしで柔らかな印象を持ちつつ、端正な素材使いの美しさが気に入って、よく着ていたもの。最近でこそ着る機会は減ったものの、捨てようとは思いません。
デザイン、クオリティともいいものを選べば、長く着られる見本のようなジャケットです。
◆服を1年や2年で捨てるべきだとデザイナーが言うのは聞いたことがない
さて、私は2010年から自分のブログでおしゃれに関するコラムを書き、また「ファッション・レッスン」というオリジナルのサービスを提供していますが、当初から服は長く着ようと言い続けています。そして、サイズアウト、または飽きたという理由で着なくなった服は捨てるのではなく、誰かにあげるか、どこかで売るようにアドバイスしています。
私は服を作る勉強をし、自分でもたくさん作りましたし、作る側で働いていたので、まだ着られる服を捨てたらいいなどと思わないし、他人にも言えません。
私と同じように服作りを学んだ人たちは皆、服を1年や2年で捨てるべきだとは考えていないでしょう。そんなことをデザイナーが言うのは聞いたことがありませんし、私がおしゃれだなと思う人たちも、古い服を大事に着たり、セカンドハンドを取り入れる人ばかりです。
◆今後悔しているのは、捨てなかったことではなく、捨てたこと
実は私も、後悔していることがあります。それは20代の頃買った、ヨウジヤマモトのウールギャバジンのスーツを捨てたこと。
合わせるインナーも買ったので、コレクションで発表されたものと全く同じルックを持っていました。あれをギャバジンが光ったぐらいで捨てなければよかった。