木曜劇場『わたしの宝物』最終話より
◆もともと父と子の縁はあやふやなものなのかもしれない

 托卵は、現実にも少なくないと言われている。産んだ母親でさえ、父親が特定できない場合もある。子が大きくなったときに知ったらショックは大きいかもしれない。ドラマの中でも栞にいつか本当のことを話さなければいけないかもしれないと、美羽と宏樹が話し合うシーンがあった。戸籍上、実子になっているのだからわざわざ話す必要があるかどうかはわからないが、子には出生について知る権利があるのは確かだ。

木曜劇場『わたしの宝物』最終話より
 宏樹は「血のつながった父子」にこだわったが、冬月は「自分は栞ちゃんが生まれてきたことさえ知らなかった」「半年間、一生懸命育てたのはあなただ」と宏樹こそ父親なのだと告げる。そういうことで父かどうかをはからなければならないほど、もともと父と子の縁はあやふやなものなのかもしれない。

 最後に宏樹が「美羽、愛してるよ」と言う。美羽も「私も。愛してる」と返す。そしてふたりは栞にも「愛してる」と言う。愛が不変であるならいいのだがと感じてしまった視聴者の私は性格が悪い。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio