譲渡所得がマイナスになる場合、その差額が譲渡損失として扱われます。たとえば、売却価格が購入時の費用や売却諸経費を下回る場合に発生します。この損失は税金が発生しないため原則として確定申告の必要はありませんが、「損益通算」や「繰越控除」の特例を利用する場合は確定申告が必要です。不動産売却時に損失が出た場合、その影響を最小限に抑えるための手続きが重要です。

譲渡損失を活用する:知っておきたい2つの特例

譲渡損失が発生した場合でも、一定の条件を満たせば税負担を軽減するための特例を活用できます。ここでは「マイホームを買い換えた場合の特例」と「特定のマイホームの特例」の2つについて説明します。

1. マイホームを買い換えた場合の特例

この特例は、マイホームの買い換えを行った際に譲渡損失が生じた場合に適用されます。売却した不動産と新居の双方が条件を満たす必要があります。主な条件として、売却物件の所有期間が5年以上であることや、新居の購入が売却した翌年の12月31日までに行われ、住宅ローンの融資期間が10年以上であることが挙げられます。また、売却した敷地面積が500㎡以下であることも条件の一つです。
 

2. 特定のマイホームの特例

買い換えを伴わないマイホームの売却で譲渡損失が発生した場合に適用される特例です。この特例では、売却時点で住宅ローン残高があり、売却価格がその残高を下回る場合に利用可能です。また、売却物件の所有期間が5年以上であることが条件で、合計所得金額が3,000万円以下である必要もあります。この特例を活用することで、損益通算や繰越控除を通じて節税が可能となります。
 

譲渡損失の特例を利用するための確定申告の手順

譲渡損失の特例を利用するには、確定申告を正確に行うことが必要です。以下はその手順について説明します。
 

必要書類の準備

まず、一般的な必要書類をそろえます。これには、確定申告書、譲渡所得の内訳書、売買契約書の写し、譲渡費用を証明する領収書、登記事項証明書などが含まれます。また、特例を利用する際には、居住用財産の譲渡損失の明細書や損益通算および繰越控除に関する計算書、住宅ローンの残高証明書などの追加書類が必要です。これらを事前に用意することでスムーズに手続きを進められます。
 

確定申告書の作成と提出