たとえ認知症になったとしても、本人の認知症が回復したら、また預金を引き出すことは可能でしょう。
先述の「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方(公表版)」でも、「通常取引」として「銀行での高齢顧客との取引において、本人に認知判断能力がある場合(取引の有効性が確保できる場合)は、通常取引を行う」としています。
ただ、現代の医療では認知症の完治・回復は難しく、治療により進行を緩やかにする程度にとどまるようです。そのため、認知症になってしまった方の預金の引き出しは、本人が行うのではなく代理人が行えるよう検討していったほうがよいかもしれません。
銀行協会や厚生労働省は、認知症などによって認知判断能力が低下した場合、成年後見制度などを利用することを促しています。成年後見制度とは、判断能力が不十分な方の保護を目的とした制度で、家庭裁判所に選任された成年後見人が本人に代わって契約をしたり、本人の契約を取り消したりすることができるという制度です。
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があります。法定後見制度は、すでに判断能力が不十分である方を、裁判所が選任した後見人などが支援する制度です。任意後見制度は、将来自分の判断能力が不十分になったときに備えて、本人があらかじめ結んでおいた任意後見契約に従って、任意後見人が支援する制度です。
法定後見制度では、後見人を裁判所が選任します。一方、任意後見制度では、後見人を本人が決定します。本人の認知症が回復した場合は、任意後見制度の利用を検討するのもよいのではないでしょうか。
まとめ
以上のことから、認知症になって預金口座が「凍結」されたとき、対応としては以下のようになると考えられます。