かつての日本の映画興行は「洋画が主役」といってもいいほどだったが、近年は急速に「洋画離れ」が進行。2020年以降、年間の興収ランキングでトップ10に洋画が5本以上並んだ年はない。

 また、コロナ禍などの影響で映画の視聴スタイルが大きく変わり、配信サービス全盛となったことで、イベント的な要素やSNS発のムーブメントなどがないと観客がなかなか映画館に足を運ばなくなっている。そのあおりを最も受けたのが実写洋画といえそうだ。

 それでも、昨年は『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』、一昨年は『トップガン マーヴェリック』、『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』、『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』といったヒット作が上位に食い込んでいたのだが、ついに今年度はトップ10から実写洋画が消えてしまいそうだ。

映画ライターが「洋画離れ」の背景を分析

 なぜここまで「洋画離れ」が進んでしまったのか。豊富な取材経験と業界知識を持つ映画ライターの長野辰次氏はこのように解説する。

「今年の洋画に話題作が少なかった理由は、2023年の全米脚本家組合と米俳優組合の5か月近くに及んだ長期ストライキの影響が大きかったのではないでしょうか。来年はトム・クルーズの『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(2025年5月公開予定)などがあるので、2年連続で洋画の実写作品がベスト10から消えることはさすがにないと思いますが、客を呼べるハリウッドスターがいまだにトム・クルーズやブラッド・ピット、ジョニー・デップあたりという状況だと、若い観客の実写洋画への動員は今後も難しいかもしれません。

 また、ディズニーがオリジナルの新作をあまりつくれず、過去のヒット作の続編に頼っていることに象徴されるように、ハリウッドの企画力不足は明らかです。今年は面白い洋画に出会えなかったとお嘆きの方は、アマプラ(Amazon Prime Video)での配信が始まったA24製作の『シビル・ウォー アメリカ最後の日』か、スペイン出身のパブロ・ベルヘル監督の劇場アニメ『ロボット・ドリームズ』(公開中)あたりを観て、溜飲を下げてほしいですね」