給付政策の課題は、「十分な資産を持つ人にも給付してしまう可能性がある」ことです。給付対象の多くは高齢者世帯となりますが、すべての世帯が困窮しているわけではないでしょう。
金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和5年」によれば、調査対象世帯2500世帯のうち、金融資産が3000万円以上ある世帯は60代では15.1%、70代では17.3%です。これは、金融資産を保有していない世帯(60代33.3%、70代26.7%)に次いで多い割合を占めています。
上記を踏まえると、高齢者のなかには収入が少なく住民税が非課税となっていながら、十分な資産を備えている世帯が一定数存在すると考えられます。
今後同様の施策が行われるのであれば、「本当に給付が必要な世帯」を絞り込んだり、収入にかかわらず多くの年代が生活苦を解消できたりする内容を期待したいところです。
まとめ
2024年10月分の消費者物価指数が前年同月から2.3%上昇していることからも分かるように、物価は依然として高いままです。私たちがこれからのインフレにうまく付き合っていくには、一時的な給付だけでは困難だといわざるを得ないでしょう。どの家庭も物価高の苦しさに直面しているからこそ、消費が活性化するような施策が求められます。
出典
内閣府 国民の安心・安全と持続的な成長に向けた総合経済対策~全ての世代の現在・将来の賃金・所得を増やす~政策ファイル
首相官邸 岸田内閣総理大臣記者会見
厚生労働省 令和5年国民生活基礎調査 所得 表番号131 世帯数、世帯主の年齢(10歳階級)・住民税額階級別
厚生労働省 令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査] 令和5年調査結果
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数 全国 2024年(令和6年)10月分(2024年11月22日公表)
執筆者:石上ユウキ
FP2級、AFP