住民税非課税世帯への「3万円給付」があるようですが、なぜ「中間層」への給付はないのでしょうか。物価高はどの世帯も直面していると思うのですが…
政府は11月22日に、新たな経済対策として「住民税非課税世帯への3万円給付」の実施を決定しました。非課税世帯への給付が続いたことで、「また対象者が限られている」「現役世代への補助は?」といった不満の声も聞かれます。   中間層への給付はなぜ行われないのでしょうか。給付に至った理由や給付政策の課題について解説します。

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給付に至った経緯

非課税世帯への3万円給付は、今夏から調整が進められていました。2024年の通常国会の閉会時に、当時の岸田首相は記者会見で次のように明言しています。
 
「年金(生活)世帯や低所得者、地方経済に焦点を絞って、思い切った検討をしてまいります。具体的には、物価高の中で食費の高騰などに苦しんでおられる年金(生活)世帯や低所得者世帯を対象として、追加の給付金で支援することを検討いたします。」
 
会見では、この施策について秋ごろの策定を目指すとしていました。しかし、9月には自民党総裁選挙、10月には衆議院議員総選挙が行われたことで政策の策定が遅れ、11月下旬の発表となったのです。
 

なぜ非課税世帯へ給付金が支給されるのか

住民税非課税世帯へ給付金が支給される理由としては、収入が低い世帯は物価高で生活に困窮していることが挙げられます。
 
とくに、住民税非課税世帯には高齢者世帯や年金収入のみの世帯が多いです。厚生労働省の「令和5年国民生活基礎調査」によれば、調査対象となった65歳以上の高齢者世帯2504世帯のうち、住民税非課税世帯は955世帯となっています。高齢者世帯の約4割が非課税世帯となっているのです。
 
高齢者に非課税世帯が多い理由は、年金は所得控除で差し引かれる金額が大きいためです。単身世帯であれば年収155万円以下、夫婦世帯なら年収211万円以下が住民税非課税の目安となります。
 
年金収入の令和4年度末平均月額は、基礎年金が5万6316円、厚生年金が14万3973円です。よって、厚生年金を平均以下の金額で受け取っている人は、住民税が非課税となる場合も多いでしょう。基礎年金のみ受け取っている人に至っては、満額を受給しても年間の受給額は約80万円であるため、確実に住民税が非課税となります。
 
また、高齢者世帯は年金収入のみの世帯が多く、収入が少ないことも非課税世帯が多い理由の1つでしょう。高齢になると、健康上の理由などから働くのが難しくなり、労働収入を得にくくなります。
 
収入源は年金のみになるケースが多く、現役のときに比べて年収は大きく下がると想定されます。生活費のやりくりが急激に厳しくなる可能性があるため、政府は非課税世帯に絞って給付しているのです。
 

給付政策の課題