マルチ商法のカルト的なマインドコントロールがより深まっていったように感じるのは、ライオさんが11歳のころである。

「母がマルチ商法に深入りしていったきっかけはおそらく、海外で開催される視察に招待されたことです。本社や製造工業などを訪問する過程で、スイッチが入ったように思えます」

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本社に招かれる会員。そこには、“選ばれしメンバーだけが行くことができる”いう特別感があるようだ。

さらに、東京ドームのような大きな会場でのイベントも、モチベーションを底上げする。

トップクラスの販売員が大スターのように歓声を浴びながら、成功に至った華やかなストーリーや、涙を誘う苦労話を展開するのがお約束の大集会である。

◆驚くべき行動力

自分もそのポジションを目指したい! こんなに仲間がいる! と奮起させられる会員たちの姿が目に浮かぶ。

「そして、マルチ商法でよくある“夢リスト”です。それで母は、『自分の両親と暮らすための、夢の二世帯住宅』を思い描くようになりました」

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夢リストとは、活動のモチベーションを維持して、やる気を一層高めるために、夢や願望を書き出させるというワークである。

目標が明確になったライオさん母は、さっそくリストに書いたことを実行に移し、二世帯住宅を建てた。

そして、そのローン返済のために借金を背負うことになった。

◆マルチでは稼げない現実

本人が思い描くプランでは、よりマルチ商法に熱を入れ、しっかり稼ぎ、ローンの返済をするつもりだったのだろう。しかしそれはあくまで“予定”であり、無謀な計画でもあった。

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「母は販売員活動のほかにも仕事を持っていましたが、家のローンに加えて、安くはない商品の継続購入。とても出費に見合う収入ではありませんでした。

そうしているうちにタイミング悪く、父の会社が倒産しました。父をマルチ活動に引き入れようと連れまわした結果、離婚。家計が破綻していきました」