今どき、フレームアウトした人物を本作のようにこんな律儀なフレームインでつなぐことは少ないからである。これはたとえば、チャーリー・チャップリンなどのサイレント期のドタバタ喜劇映画で多用されていたカットのつなぎ方。それを令和の特撮パロディー(?)ドラマであえて使っているところに本作のユニークな魅力を感じたのだ。

◆コメディ俳優の素質

テレビ東京『クールドジ男子』公式サイトより
テレビ東京『クールドジ男子』公式サイトより
 そうした古風な演出に対して、藤岡真威人はなんとも涼しい顔して前のカットから次のカットへ、フレームアウト、フレームインする。フレームに対する感性が優れている彼が演じる広野健太がコミカルなキャラクター性ということもあるが、そもそも本人が本質的にコメディ俳優の素質をもっているのか。

 他の作品も確認してみる。さまざまなタイプの「“クール”で“ドジ”なイケメン男子」たちの生態をで描く『クールドジ男子』(テレビ東京、2023年)に藤岡真威人が出演している。彼が演じた二見瞬は、“強がりストイック”というタイプに分類されている。

 第1話の初登場が登校場面として描かれる。バス車内でゆられる瞬がイヤホンで音楽を聴いてテンションをあげているつもりが、実はイヤホンが抜けていて音がだだもれになっている。内心焦りながら、外面はカッコつけようとする性格が分類の理由である。

◆画面の内と外を想像力で結びつける

 内面の焦りがモノローグで描かれることで、静かに取り繕う外面とのちぐはぐなギャップが、藤岡の身体全体で表現されている。この内面ドタバタな感じをそれこそクールに演じるあたり、やっぱりコメディ俳優の素質があるんだなぁ。

 すました顔でつり革につかまり、画面上をゆらりゆれる姿もすごくいい。登校場面から翻って、下校する場面でも瞬は音をだだもれにする。校舎からでてきた彼がイヤホンを耳に装着していると、まーた絶対コードがつながっていないよなと視聴者はすぐに想像できる。