「幸い、親兄弟と、親友と、勤務先の甘いもの好きの先輩に交渉が成立しました。なんとか5ホールのクリスマスケーキを購入できる旨をLINEで返信したんです」
しかし、忙しいのか郷里さんからの返事はなかなか帰ってこず、返事を待つ間にクリスマスイブが訪れたそうです。
◆なりふり構わない押し売り
クリスマスイブ当日の夜、その後郷里さんからの連絡がなく夏美さんは少し落ち込んでいると、郷里さんが大きなビニール製のバッグとともに突然訪ねてきたそうです。
「なんとそのバッグの中身、全部で10ホールのケーキが入っていたんですよ!」
夏美さんが何事かと目を丸くしていると、郷里さんは玄関先で土下座をして「このケーキを全部なんとかなんない?」と言ってきたそう。その金額はなんと合計5万円。しかも今日中にその売上金をお店に持ち帰りたいとのこと。
「いつもはイケメンに見えていた彼が、途端に哀れな一人の男性に写った瞬間でした」
◆クリスマスケーキにノルマを出されていた
そこから白状するように話を始めた郷里さん。実は郷里さんのお店は最近経営が思わしくなくスタッフにも販売ノルマが課されているそうです。しかも、スタッフ自身もノルマを達成することで時給が多少上乗せされるとのこと。
「実は私に声を掛けたきっかけも、ケーキが有名な店の紙袋を持って歩いていたことが理由だったみたいです。結局、私に近づいてきたのはノルマ達成が目的なのか聞くと、それだけではないと一応否定していました」
しかし、なんだか急に気持ちが冷めてしまった夏海さん。急に体の力が抜けるのを感じたそうです。仕方がないので、夏海さんはとりあえず家賃支払い用の封筒から5万円を取り出し郷里さんに手渡したそうです。すると郷里さんは途端に安堵の表情を浮かべ急いで店に帰っていったといいます。
◆当分ケーキは食べられなさそう
「帰っていく後ろ姿を見て、結局私はケーキを買わせるだけの女だったとようやく気づきましたね。なので、その後すぐにLINEで別れを告げました。それから、身内と先輩の家が幸い近くにあったので気を紛らわせるために自ら配達に向かうことにしたんです」