2カ月の入院とリハビリで、階段の上り下りはできるようになって帰ってきたはずだったが、その後サチヨさんの状態は急激に悪化した。あっという間に、再び階段の上り下りが難しくなったのだ。

 階段だけではない。自宅での生活も心もとなくなっていると言う。家事をするどころか、ベッドから起き上がる、トイレに行くという動作だけで精一杯という状況だった。松丸さんはもちろん、サチヨさんも妹も想像もしていない状況に戸惑った。

「リハビリ中心のデイケアには週3回も行っているのですが、個別のリハビリは15分程度しかしてくれないと言うんです。母はそのことにも不満のようで、入院していた病院のように、理学療法士がしっかりリハビリしてくれる病院なら、また回復するのではないかと母は期待しているようなのですが……」

 サチヨさんが再び入院してリハビリに励み、いったん回復したとしても、それはあくまで環境の整った病院内でのことで、自宅に戻るとまたすぐに状態が低下してしまうのではないか。松丸さんは危ぶむ。

「90歳近いのですから、状態の改善を望むのが間違っているのではないかと思うんです。今の状態を維持できれば御の字なのではないか……母はそれが理解できていないのだと思います。人一倍元気だっただけに、自信もプライドもあるのでしょう。それは決して悪いことではないとは思うのですが」

 本当はもう自宅に戻るのは難しいのではないか。施設入所を検討する時期なのではないか――。そう考えていたとき、妹から連絡が来た。

――後編は1月5日公開です