可処分時間を増やす「並列思考」

1日24時間をそれ以上に増やすには、「並列思考」で自分の行動を組み立てることです。

たとえば、家事をするとき、掃除機をかけてから洗濯機を回すか、洗濯機を回しながら掃除機をかけるかで、家事に要する時間が変わるでしょう。

これと同じで、業務日報を書いてから、明日の会議の資料をコピーすると、コピー機の前で待ち時間が発生しますが、コピーをかけてから業務日報を書けば、日報を書き終わったころにはコピーも終わっています。

自分の仕事を終えてから相手にメールで依頼するよりも、先にメールを投げておいて、返信を待っている間に自分の仕事に取り掛かれば、それが終わった頃に相手からの返事が来ますから、待ち時間が短縮されます。

これを私は「並列思考」と呼んでいますが、要するに“ながら”の技です。

移動時間はただ移動にだけ費やすのではなく、電車の中なら本を読む。タクシーなら携帯で打ち合わせをするなど、移動と他のことがセットででき、時間が2倍になります。自分の使える時間である「可処分時間」を増やすには、並列思考が有効です。

これに対して、一定の時間に同じことを集中してやるのは「直列思考」です。

たとえば、この時間は伝票入力を一生懸命やろうとか、この時間は原稿書きに集中しようとか、この時間はメール返信に費やそうなどと、あることを集中してやるのが「直列思考」です。

ノッているときは、「直列思考」でやること。就業時間を過ぎていても、休日であっても、締め切りがかなり先であっても、徹底的に「直列思考」でやりましょう。ノッているときに進めてしまえば、〝時間の貯金〟ができるので、あとがラクです。

コストパフォーマンスからタイムパフォーマンスへ

映画を観に行って、とてもつまらなかったとします。この場合、あなたが損した金額はいくらでしょうか?

映画代の1800円?

いえ、違います。1万2000円の損です。

年収500万円のサラリーマンの時給を約2500円とします。仮に自宅から映画館までの往復が約2時間なら、上映時間の2時間と合わせて、合計4時間を費やしていますから、2500円×4=1万円。それに往復の交通費を加えると、1万2000円以上の損というわけです。

私たちはお金を投下するとき、コストパフォーマンス(費用対効果)を重視します。

お金は減れば目に見えますが、時間は見えないので、どうしても軽視してしまうのでしょう。

もちろん、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスは、それぞれが置かれた立場や状況、社会的なステージによっても異なります。

たとえば収入が少ない人にとっては、相対的に時間よりお金の優先順位が高くなるし、収入が多い人にとっては相対的にお金より時間の優先順位が高くなる、ということはあるでしょう。

しかし、お金は失ってもまた稼げばいいだけですが、失われた時間は取り戻すことができません。

そこでこれからは、タイムパフォーマンス、つまり時間対効果についても意識してみることが大切です。

見切る勇気を持つことが大切

先のタイムパフォーマンスの考え方でいくと、「迷わない」「決断力の速さ」「見切る勇気」が重要になってきます。

とにかくあれこれ迷うよりも、まずやってみる。その場合、自分なりに判断基準というか、仮説を持っておくと意思決定スピードが上がります。

たとえば、食事する店を選ぶとき、メニューの写真がしっかりしていれば、すぐに入ります。というのも、飲食店にとっての商品は「料理」ですから、そのプレゼンテーション手段であるメニューの写真を丁寧に撮っているということは、自らの商品を大事にしているということ。そんな店の料理なら、きっと美味しいだろう、という仮説です。

それで入ってみて、雰囲気が悪かったり、味が美味しくなければ、すぐに店を出て別の店に行けばいいのです。そして自分の仮説を修正していく。

それを繰り返すと、瞬時でも、大きく外さない意思決定ができるようになります。

映画やレンタルDVDも、ちょっと観てつまらなそうだったら、見切ってパッとやめる。

「お金を払ったからもったいない」といって最後まで付き合うのは、お金と時間のダブル損になります。

であれば、損失はお金だけに食い止めるほうがトクというものです。

ビジネスは走りながら軌道修正する

仕事に、完璧な準備などありえません。

どんなに周到な準備をしていても、走り始めてみると、まったく別の方向に転換しなければならないことはよくあります。

軌道修正を迫られる可能性があるなら、準備や計画に必要以上に時間をかけるのではなく、見切り発車でもよしとする姿勢を持っておくことです。

新規事業はまさにその繰り返しで、計画どおりうまくいくほうが珍しいものです。

事業計画書の作成を推奨するコンサルタントや起業セミナーは、ほとんど当てにはなりません。だってそんなものは結果的にムダになるから。

だから私は新しいビジネスを立ち上げる時、事業計画書なんて作ったことはありません。キャッシュフローを把握して資金ショートさえ起こさなければ、走りながら軌道修正したほうが、結果として儲かるようになります。

1年間を調査と計画に費やして、次の1年で一巡させるようなのんびりとした時間軸ではなく、1日でプランニングし、1週間で一巡させる。それによって、前者の52倍の経験値が得られます。

たとえば、週の前半に新しいセミナーの企画を思いついたら、すぐに週末の貸し会議室を押さえ、告知文章を考える。その日の夜には集客用ウェブサイトをアップし、募集を開始。メールマガジンやブログでも告知する。そして土曜日にセミナーを開催して資金回収。終了後は課題を洗い出し、次の企画や集客のための参考とする、というふうに。

他人が1年間で経験することを、自分は1週間で経験する。他人が10年間で得られるノウハウを、自分は1年間で身に付けるのです。

自分にとって充実した時間を生みだす

私たちは「効率的」という言葉にとかく惑わされがちです。確かに「効率化」は重要。では、それをやった先には、自分が目指すものが手に入るのか?

私たちは、基本的には撒いた分しか刈り取ることができません。では自分は、何を撒いているのか?それは本当に刈り取りたいものなのか?

時間をムダにしないように動き回り、少しでも効率よく進めることを目的にしてしまうと、「目の前のこと」だけに振り回されて、忙しいだけで終わり、ということになりかねません。

また、面倒くさいことから避けるために、「それは非効率的だ」と主張してしまうことがあります。

本当はやるべきことはわかっているけれども、それは面倒だからやりたくない。自分が大変になるのがイヤだ。これ以上忙しいとか仕事が増えるのはイヤだ。もっとラクな方法がいい。

だから効率的じゃないと思ってしまう。

しかし面倒な方法を除外すると、効果のある方法は残らないものです。だから結果も出ない。

会社にとって効率的で生産性の高い従業員であることと、自分にとってそうであることとは必ずしもイコールでないということを意識したいものです。

(画像=Webサイトより ※クリックするとAmazonに飛びます)

 

午堂登紀雄

不動産コンサルタント。米国公認会計士。1971年、岡山県生まれ。中央大学経済学部卒業後、会計事務所を経て大手コンビニ企業に就職、経営コンサルタントとして活躍。2006年、不動産コンサルティングを行う株式会社プレミアム・インベストメント&パートナーズを設立。現在は、経営者兼個人投資家としての活動のほか、講演も多数行ない、資産は5億円を超える。

提供・ZUU online

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