◆20年経過しても「異常」なほどピュアな雰囲気を発揮

『ロミオとジュリエット』ホリプロ
『ロミオとジュリエット』ホリプロ
若い頃、等身大の繊細な心の震えを武器に人気を獲得する俳優は少なくない。藤原も十代のとき、デビュー作である舞台「身毒丸」で等身大の少年らしさを存分に発揮していたし、二十代では「ロミオとジュリエット」(04年)で恋する少年をハツラツと演じていた。

とりわけ印象的なのは「ハムレット」(03年)で、本当は愛しているにもかかわらず邪険(じゃけん)に扱った恋人オフィーリアが亡くなり、その亡骸をそっと抱きしめ嘆く藤原の姿は名場面である。

本当ならオフィーリアの兄にかけるセリフ「おれはオフィーリアを愛していた」を亡骸に向けて語りかけたのは藤原の判断だったという。思わず目の前の恋人に言葉をかけてしまうというのがとてもいいなと筆者は思ったものだった。

このとき、「ハムレット」も「ロミジュリ」も、相手役は鈴木杏で、あれから20年経過したいま、「ゼンケツ」での相手役は、鈴木と同じ事務所の後輩の広瀬アリスである。鈴木よりもさらに年下の相手役とピュアな感情の交換を演じても、まったく違和感がない。むしろ、広瀬のほうがお姉さんのようにも見えるのだ。

最終回では、二十年前に見た『ハムレット』と同じような感動を覚えた。四十代になっても繊細な叙情的な透明感――一言でいえばピュアな雰囲気を発揮できるのはドラマ的にいえば「異常」(いい意味で)なほどである。

◆芝居になるとがらりと変わる。まったく化ける俳優

テレビドラマで藤原の繊細キャラと言ったら、ミステリードラマ『リバース』(TBS系)がある。そこではコーヒーをいれるのが好きな実直な人物で、そこでもピュアな面を発揮していたのは2017年のことで、あれから7年も経過しているのだ。