◆地元の博多を一回振り返ってみてもいいのかな

田口浩正さん
――これまでに田口さん自身のターニングポイントはありましたか?

田口:バラエティーって私生活を切り売りする部分もあるじゃないですか。だから、「なるべく役者は出ないほうがいい」と思って、番宣以外はほぼバラエティーに出ないって時期がずっと続いてたんです。けど、43歳ぐらいのときに「自分のことを表現してもいいのかな」と感じ始めてシフトチェンジしたんですよね。

例えば自分のライブで、テレビでは絶対言わないような家族のこととかを表現してみたりとか。その文脈があったから、「30年ぶりにテンションでネタをやってみよう」ってことにもなったんです。まだこれからいろんな表現をしていくと思うけど、60歳を前に自分の足跡みたいなものをアウトプットする年齢にきてる気はしますね。

――ちなみに、43歳のときに何かきっかけがあったんですか?

田口:厄年になって、自分自身があんまりいい方向に行ってないなって気がしたんです。「何かやらなきゃ」と考えたときに、「若い頃はガツガツ東京で生きてきたけど、地元の博多を一回振り返ってみてもいいのかな」っていう気持ちにすごくなって。

とにかく僕と何かしらの関係がある福岡出身の仲間たちと地元で何かやろうと。僕はすぐ先輩風吹かせるので、いろんなところで「じゃ手伝いーね」とか言いながら協力者を募って、博多弁の歌を歌う『8343(やさしさ)』ってバンドを作ったりしたんですよね。

いまだにそのバンドは続いてるし、今後もやれる時期にポツンポツンとやっていきたいなと思ってます。

◆“ただドラマをやる人”で終わっちゃう

田口浩正さん
――俳優の田口さんだけを知っている方たちにも、「『8343』を観にきてほしい」みたいな思いはありますか?

田口:もちろん。舞台とかドラマを観てくれる人たちっていうのは、その作品のキャラクターで僕を知ってくれているわけじゃないですか。ただ、それは人が書いたセリフであって僕が発してる言葉ではないから、テンションでも何でも、どこかのタイミングで興味を持ってもらって相乗効果で知ってもらうのが一番嬉しいです。