斎藤工が彼の出世作である不倫ドラマ「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(14年 フジテレビ)で、度数の高い酒のようなムードを発揮していたのはちょうど10年前であった。10年経ってもなお、斎藤工の色気は健在であったことに驚いた。

◆「昼顔」以降イケメン俳優路線から遠ざかろうするよう?

「昼顔」でブレイクして以降、斎藤工は恋愛系イケメン俳優路線から遠ざかろうとするかのように、自身で監督したり、プロデュースしたり、クリエイティブな活動に熱を注いでいくようになっていた。何度か取材をしたが、もともと映画が好きだった斎藤の映画に対する熱は並々ならぬものがあった。

シン・ウルトラマン
庵野秀明脚本、樋口真嗣監督の「シン・ウルトラマン」でウルトラマン役として主演したり、その流れで庵野監督の「シン・仮面ライダー」にも重要な役で出たり、この数年、女性客以外にも彼の魅力に気づいた人も増えたのではないだろうか。コロナ禍では、ミニシアターを救う活動も積極的に行い、自身が監督する映画では、子どもを持ったスタッフのための託児スペースを設けるなど、映画と社会の関わりにも目を向けている。

「海に眠るダイヤモンド」は先述のリナとの場面で、久しぶりの恋愛パート要員としての登板という印象を感じさせたが、斎藤には十代の頃、沢木耕太郎の「深夜特急」に憧れてバックパッカーとして海外を放浪するような、骨太でロマンチストな面があるので(23年にはラジオドラマ「深夜特急」で沢木耕太郎役をやった)、「海に眠るダイヤモンド」の進平のような、戦争帰りの影のある、かつ、女性を引き付ける色気あふれる人物というのはドハマリだった。

(画像:TBSラジオ「朗読・斎藤工 深夜特急 オン・ザ・ロード」公式サイトより)
(画像:TBSラジオ「朗読・斎藤工 深夜特急 オン・ザ・ロード」公式サイトより)
自然にダダ漏れなのか、すごく頑張って演じているのかよくわからないが、色気の自家発電力は相当のものである。

◆色気だけでなく、生命力の輝きを演じて見せた斎藤工