この時代に、なんでド正面から香港ノワールオマージュの刑事ドラマを作る必要があるのか、誰が望んでいるのか、なんの意味があるのか、そんなことは関係ないんだよなと強く感じるドラマでした『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系)。
情熱とリスペクトがあれば、物語はジャンルを超えて人の心に届くものですね。最終話は、死と裏切りが幾重にも積み上げられるカタルシスに酔いました。酔ったよー。振り返りましょう。
■幹部たちには死んでもらいます
キイチ(竜星涼)とユキ(八木莉可子)の潜入兄妹が潜入した巨大詐欺組織「幻獣」。鳳凰(藤ヶ谷太輔)を筆頭に、その義兄弟である青龍(桐山漣)、白虎(黒谷友香)、朱雀(白石聖)、玄武(吹越満)という5人の幹部がいましたが、最終回なので鳳凰以外の4人には死んでもらうことになりました。
まずは朱雀。前回、キイチとともに敵対組織・九頭竜の手下である信濃(篠田麻里子)のアジトに潜入し、命がけで守ってもらったことから、キイチに情が移っています。
そんな朱雀が、キイチたち兄妹が潜入捜査官であることを知ってしまい、自らの手で始末することに。しかし、その現場に信濃が現れ、キイチに銃を向けます。
信濃の冷酷な弾丸の前に、倒れたのは朱雀でした。
「キイチ……あんたのこと、誰にも話してない」
そう言って息を引き取る朱雀。自らの身代わりとなって死んだ朱雀を胸に抱きながら、キイチはこのドラマで百万回目の「最悪だ」をつぶやくことになります。
白虎と玄武。ユキと3人で、幻獣のアジトで作戦の進行を見守っていましたが、そこに警察が突入してきます。逃げようとしないユキの姿を見て裏切りを知った2人は、かつて根城にしていた古い県営アパートに逃げ込みますが、周囲を包囲され万事休すです。
白虎がくわえたタバコに、火をつけてやる玄武。
「こうなることは占いでわからなかったの?」
「楽しかったからいいでしょ」