「今、発達障害に悩む方がなぜこんなに増えているのというと、ひとつは“時代の変化”が原因だと思います。技術革新によって、社会や産業の構造の変化が進んで、人間は単純作業から頭脳労働が中心になった。

 こうした社会ではどうしても高い知的能力が求められるので、集団の中で相対的に低い人は、劣等感を抱きやすかったり、集団から疎外されたり、労働市場から締め出されてしまうことが増えています」

◆社会が求める能力のハードルが高くなった

『夜のこころの診療所』漫画
 社会が私たちに求める、そもそもの能力というハードルが高くなったということでしょうか。

「そうです。それだけ社会の中で、知的能力の多様さや、低いと生きにくいことについて、理解や対処がまだまだ追いついていないのでしょう。臨床現場から僕が発達障害や知的障害のある人たちを見ていると、この頭脳労働中心の社会では、彼らの活躍の場は年々減り続けています」

『夜のこころの診療所』漫画
「職場のリーダーたちも、社会制度としてどのように彼らをフォローしたらいいのかわからないように感じます。発達障害の人々が、定型の(発達障害を伴わない)人よりも生きづらいのは確かです。その苦しみや困難さを『過剰診断だ』と一蹴するのは、違うのではないでしょうか」

【益田裕介】

早稲田メンタルクリニック院長。精神保健指定医、精神科専門医・指導医。防衛医大卒。YouTubeチャンネル「精神科医がこころの病気を解説するCh」を運営し、登録者数60万人を超える。著書に『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科に行ってみた!』

【青山ゆずこ】

漫画家・ライター。雑誌の記者として活動しつつ、認知症に向き合う祖父母と25歳から同居。著書に、約7年間の在宅介護を綴ったノンフィクション漫画『ばーちゃんがゴリラになっちゃった。』(徳間書店)、精神科診療のなぞに迫る『【心の病】はこうして治る まんがルポ 精神科医に行ってみた!』(扶桑社)。介護経験を踏まえ、ヤングケアラーと呼ばれる子どもたちをテーマに取材を進めている。Twitter:@yuzubird