冗談っぽく使うことが多いようですが、聞いていて面白いものではありませんね。
◆複雑で難解な正しい知識は、あとからついてくる
昨今の“発達障害ブーム”ともいえるこの現象、現役精神科医の益田先生はどのようにとらえているのでしょうか。
「確かに、発達障害が一般的になるにつれ、ミスの言い訳に発達障害を自称する人は増えている気がします。そしてそんな彼らの大半は、病院で診断されたわけではなく、単に流行語の一種として発達障害という言葉を利用しているようです」
自称する以外にも、勝手に相手が“そう”だと決めつけるケースもあるようです。
「SNSを中心に、不祥事を起こした芸能人をADHDだと決めつけるような投稿があったり、または境界知能(知的障害ほどではないが、集団の中では相対的に下位層になってしまう人たち)と決めつける投稿もあります。
これらは差別や偏見につながりますが、新しい言葉が社会に定着する前には、通過しなければならない現象なのかもしれません。
つまり、だれでも使用できるので誤用されつつ広がり、使用されていく中で、複雑で難解な正しい知識があとからついてくるということです」
◆言葉が浸透すれば声を上げやすくなる
言葉が広まる過程を経ている、ということなのですね。
「そうですね。でもだからこそ、僕たち医療従事者が正しい知識の啓発を続けなきゃいけない。それがとても重要だし、大切です。
それに僕は、発達障害を自称する人が増えることはそれほど悪いことだとは思っていないんです。診断数自体も増えているし、だからこそ『自分も診断されていないけれど困ってる』『まだ病院には行けていない』という人々も増えている。
言葉が浸透することで、今まで声を上げられなかった人たちが上げやすくなっている、そんな気がします」
◆発達障害は時代が生み出した?
しかし世の中には、昨今の発達障害の過剰診断を問題視する声も少なくありません。