橋本環奈主演の朝ドラ『おむすび』(NHK総合)に出演する北村有起哉は、どうしてこんなに素晴らしいのか? なにがって、その特徴的な顔がである。

『おむすび』© NHK
『おむすび』© NHK(以下、同じ)
 単純に見た目の話をしているのではない。顔そのものが演技の強度になっているのだ。この顔の魅力は、父・北村和夫の演技と連関しながら、現在と過去の朝ドラ作品が連動するように思う。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、『おむすび』と『ちゅらさん』(NHK総合、2001年)の俳優父子の共通点を連動させて見る楽しみを解説する。

◆朝ドラ俳優としての北村有起哉

『おむすび』は、とにかく北村有起哉の顔、顔、顔を見るためのドラマだと勝手に思っている。北村が演じるのは、主人公・米田結(橋本環奈)の父・米田聖人である。

 たとえば、第2週第7回、高校生になった結がどんな友だちと付き合っているのかと聖人は心配する。迎えにきたクラスメイトの柚木理沙(田村芽実)と結が出掛けていく場面。農具をもった聖人がふたりを二度見する。バストサイズの画面上には、「ふぅーん」ともらす北村特有の仏頂面がぴったりおさまる。

 あるいは、第7週第31回では結に彼氏ができたのではないかと勘ぐる聖人が妻の米田愛子(麻生久美子)に制止され、後ずさりしながらすっとんきょうな顔をする場面がある。朝ドラ俳優としての北村有起哉の顔は、どうしてこんなに素晴らしいのだろうか?

◆顔そのものが画面の基礎

『 役者人生・本日も波瀾万丈』(北村和夫・著/近代文藝社・刊)
『 役者人生・本日も波瀾万丈』(北村和夫・著/近代文藝社・刊)
 上述したように、本作での北村の演技は、あくまで顔の演技であって、表情が豊かだとか、その変化がうまいとか、そんな単純なことではない。表情云々以前に、顔そのものが画面の基礎みたいになっている。

 北村の演技を捉えるとき、カメラはその顔を最適に写すためのポジションに置かれ、その顔が一番際立つ画面サイズが選ばれているのではないだろうか。それは考え過ぎだとしても、本作の北村の顔にはそれだけの強度があるということだ。