何らかの力、を感じたのはこの場面だけではありません。モリモリの不倫疑惑についても、結局は専門学校に入学する前から付き合っている恋人で、バツイチのモリモリが会っていることに何ら問題はありませんでした。モリモリは卒業後、元調理師であるこの女の人とお弁当屋さんを開業するという。
そうであれば、サッチン(山本舞香)とカスミン(平祐奈)が盗み聞きしていた「私だって会いたいよ」云々のモリモリの電話との整合性がないし、店の外での「送ります」という他人行儀な態度も理解できない。
普通に暮らす人間としての自然な態度や言動よりも、これを「不倫である」とミスリードすることが優先されているということです。いちいち、場当たり的に、こういうミスリードが挟まることもまた『おむすび』では頻発しています。
すごく、脚本について毎回ちゃんと会議しているんだろうなと思うわけです。そこで誰かが「サッチンは若い男苦手だったらおもしろいだろ」「モリモリが不倫してたらドキドキするだろ」という意見が出され、物語の整合を取るプロである脚本家の意向よりも優先されている。
このレビューでは「脚本が悪い」とは言っていますが「脚本家が悪い」とは一度も言っていないはずです。なぜなら、脚本の出来が悪すぎるからです。テレビの全国放送で、ここまでひどい脚本にはなかなかお目にかかれません。何らかの力が作用しているとしか思えない。
今日だって、モリモリは「就職が決まりました」と言った直後に「お弁当屋さんを開く」と言っています。お弁当屋さんを開業する人は普通「就職が決まりました」とは言いません。こんなの、プロが書くセリフじゃないのよ。金が取れる仕事じゃないの。何が起こってるんだ『おむすび』の現場では。
■まるで『ラヂオの時間』のよう、
今や大御所となった三谷幸喜が自らの劇団・東京サンシャインボーイズに書き下ろし、後に映画化もされた『ラヂオの時間』という作品があります。