出産を控えていたリナが語っていた「今の幸せの下には、たくさんの犠牲がある」という言葉が、重くのしかかります。
主題歌「ねっこ」の歌詞が、物語の世界観にぴったり
それにしても、第6話のエンディングはお見事でした。鉄平が朝子に告白するシーンで、King Gnuが書き下ろした主題歌の「ねっこ」がドンピシャのタイミングで流れました。
「ささやかな花でいい 大袈裟でなくていい ただあなたにとって価値があればいい」
派手なことは苦手だけど、平凡な日常生活を愛する鉄平と朝子。そんな2人がお互いに惹かれ合う心情が、曲の歌詞からもありありと伝わってきました。
敗戦でボロボロになりながらも、日本が奇跡の復興を遂げて高度経済成長できたのは、軍艦島のような危険を伴う炭鉱で汗水流しながら働く人たちがいたからです。島を愛する鉄平や朝子たちにピッタリの主題歌です。
大ヒット映画『花束みたいな恋をした』へのアンサーソング
King Gnuの「ねっこ」を聴くと逆説的に思い出されるのが、TBSの土井裕泰監督が撮った恋愛映画『花束みたいな恋をした』(2021年)です。菅田将暉と有村架純が共演した『花束みたいな恋をした』は、口コミで上映館数を増やし、興収38.1億円の大ヒットを記録しています。
社会人になったばかりの恋人たちの5年間にわたる同棲生活を描いた『花束みたいな恋をした』ですが、仕事が忙しくなるにつれてすれ違いが多くなり、お互いに相手のことを大切に思いながらも別れることになってしまいます。花束みたいに美しい恋愛だったけど、地面に根を張ることはできなかった……というアイロニカルなタイトルでした。
根っこが張れなかった現代の若い恋人たちの悲恋を描いた『花束みたいな恋をした』ですが、塚原あゆ子監督らが演出している『海ダイヤ』は、一種のアンサーソングのように感じます。
軍艦島は岩礁の上に造られた半人工島です。土がない軍艦島では、草花を育てることができません。そんな殺風景な島で朝子と鉄平は「園芸クラブ」を結成し、団地の屋上を使った「屋上庭園」づくりに努めます。