米国では11月5日の大統領選以降、「爆発物を仕掛けた」という脅迫行為が全国規模で急速に広がっている。

 米連邦捜査局(FBI)などによると、投票当日、投票所に爆弾を仕掛けたという脅しは約30件にのぼった。ロシア国内から発信されたメールでの脅迫が複数あったという。

 トランプ氏が当選し、早々に閣僚選びを進めたが、トランプ氏の政権移行チームはシュワルツェネッガー氏の自宅に脅迫があった前日の11月27日、国連大使に指名されたエリス・ステファニク氏や環境保護局長官に指名されたリー・ゼルディン氏らの自宅で爆弾騒ぎがあったことを明らかにした。

 また「感謝祭」当日には、コネチカット州選出の民主党のクリス・マーフィー上院議員と5人の同州選出民主党下院議員が「自宅に爆弾を仕掛けた」との脅迫を受けている。

 いずれの事件も、爆発物などは発見されていないが、捜査当局は背景に分断が進む米国での政治的対立があるとみている。

 ただ、ほぼ同時に起きたシュワルツェネッガー氏のケースは、閣僚候補や国会議員への脅迫よりも状況は複雑だ。

 シュワルツェネッガー氏は共和党候補として2003年のカリフォルニア州知事選に立候補し、民主党の牙城を突き崩して当選した。その後、2期8年にわたって知事を務めた。

 共和党ではあるものの、映画界の人気スターでもあることから、リベラルな一面があった。中絶や同性愛の権利に理解を示し、地球温暖化問題の重要性を訴えていた。

 このため知事時代から共和党の保守派から攻撃を受けることが多々あった。特に中絶の問題については保守派から厳しく突き上げられていた。

 ニクソン元大統領のスピーチライターを務めたことで知られる保守派の作家で俳優のベン・スタイン氏が、シュワルツェネッガー氏の知事在任中にテレビのインタビューで「あいつは本当の共和党員ではない。なぜなら中絶に賛成だからだ」と手厳しく批判したことは、保守派の間で現在も語り草となっている。