その日は札幌大通公園のホワイトイルミネーションが始まると言う日の前日。

 私は他媒体の連載用にホワイトイルミネーション点灯式を取材することになっていたので、雨予報を非常に心配していました。

 思わずドライバーさんに「明日ホワイトイルミネーションの点灯式ですけど、雨が降りそうでちょっとそれは困りものですね」と何の気なしに呟いたところ、

「お! 明日からホワイトイルミネーションでしたか!」と弾むような声で返してくれたのでした。

 そして少しの沈黙のあと、

「お客さんホワイトイルミネーションを彼氏と見たことありますか?」

 と意味深に急に聞かれたのです……。

◆まさかの恋バナに発展!

イルミネーションと一緒に
 いったい何の話が始まったんだと思いつつ、「いやー、どうでしたかね……私も北海道に帰ってくるのは久々なので……」なんて返したところ、

「あのイルミネーションね。恋人同士で見ると別れるって言うジンクスがあるの聞いたことありますか?」

 なんて、恋バナが始まったのでした。

 確かにそのジンクス、ちょっと聞いたことあるような気もしますが……その噂は私が10代の頃存在していたもの。まさかアラフォーにしてこの話題をタクシーで、しかもダンディな70代と思しきドライバーさんとするなんて!

 ドライバーさんは、

「一緒に見ると別れるなんて言う噂もありますけどね。実はうち、今年で結婚40年なんですよ。毎年一緒に見てますけどね、別れるなんてとんでもない。うちはね、ずっと円満ですよ」

 と、しみじみと続けられたのです。

 ちょっとちょっとちょっと。私を泣かせるつもりですか? ワンメーターほどの距離で非常に申し訳ないと思いながら乗り込んだタクシーで、まさかこんな会話が生まれるだなんて……。

 私は「そんな……素敵すぎますね……」と胸がいっぱい。

 ドライバーさんから、

「お客さんもね、どなたと見に行くか分かりませんが、別れるとかそんなことありませんから、安心してください。大丈夫ですから」