宏樹は言う。「あのとき、すべてを話してくれれば違っていたかもしれない」と。美羽に栞の父親が誰かを尋ねたときのことだ。「美羽は相手をかばった」と宏樹は受け取った。それについてもなんら言葉を発しない美羽。何かいえば言い訳になる、それは潔くないという判断なのだろうが、言い訳ではなく説明はするべきだった。

 宏樹の決断に従うつもりだと真琴に語った美羽だが、夫が出した結論は「離婚しよう」だった。美羽はそれを受け入れるのだろうか。

◆「悪い母親」という重いキーワード

 最終的には宏樹と美羽の関係が完全に終わってしまうわけではないことを示唆しつつ、冬月が去っていくような気がしないでもないが、それでも美羽は一生、十字架を背負っていくしかないのだろう。そして宏樹も苦しみから逃れることはできないのかもしれない。

 母にすべてを打ち明けたとき、美羽は「私は悪い母親なの」と言った。そして母もまた、「私も悪い母親よ、気づいてあげられなかった」と悔いる。「悪い母親」というキーワードは重い。何がいい母親で、何が悪い母親なのかは、子どもの側が決める問題ではないのだろうか。あえて言うなら美羽は「悪い女」であって、「悪い母親」ではない。そういう「ひっかかり」を作りながらも、このドラマはどこへ向かっていくのだろうか。

<文/亀山早苗>

【亀山早苗】

フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio