泣くなり叫ぶなり、許しを乞うなり、感情を動かせばいいのに、美羽の心は動かない。それは自分への罰のつもりなのだろうが、穿った見方をすると夫を許していないともとれるほどだ。

◆妻を苦しめ、娘までも傷つけてしまう恐怖感

 美羽は余命いくばくもない母親に請われて、つい本当のことを話してしまう。栞は宏樹の子ではないと。そしてある日、病室に宏樹が栞を連れてやってくる。美羽の母が本当のことを知っているとは気づかないままに。

 美羽の母は亡くなり、便宜上、美羽は宏樹とともに自宅に戻る。栞を抱いて寝室で嗚咽する美羽の声を聞いて宏樹の顔が苦痛に歪む。このままだとむしろ、自分は再び美羽を傷つけるだけだ。それどころか栞まで傷つけてしまう恐怖感に襲われる。

木曜劇場『わたしの宝物』第7話より ©フジテレビ
 宏樹はひょんなことから、美羽の相手が冬月(深澤辰哉)だと気づく。その冬月とは仕事で関係があり、つい先日、冬月の優しさに触れて思わずワンオペの子育てがきついことを愚痴ったばかりだった。一方、冬月を愛するがゆえに嘘をついて彼の人生を変えてしまった莉紗(さとうほなみ)もまた、冬月の相手が美羽だと気づく。

 すべてを知っている真琴を含め、この5人の関係がどうなっていくのかが今後の見どころになりそうだ。

◆宏樹の繊細さと、繊細に見えて鈍感な冬月が対照的

 それにしても、相変わらず田中圭恐るべし、である。眉の動かし方、話の間のとり方、目の些細な動きでこれ以上ないくらい豊かな感情表現をするから、彼の表情から片時も目が離せない。美羽と冬月の心の動きは読めないままだが、宏樹だけが今の段階では心の内をさらけ出している。

木曜劇場『わたしの宝物』第7話より ©フジテレビ
 一方の冬月は、かなりの鈍感力である。栞が自分の子かもしれないという可能性をまったく疑っていない。最後に美羽に会ったとき、「私たち夫婦の問題だから、冬月には関係ない」と言われてしまったから、出る幕はないと感じているのだろうが、関係ないと言われれば実は関係あるのではないかと思わないだろうか。宏樹の繊細さと、繊細に見えてある意味鈍感な冬月のありようが対照的で興味深い。