こういうシンプルなミステリーになると、やっぱり鹿乃子の「嘘を聞き分ける」というチート能力には爽快感があります。スパッと嘘を見抜いて、それを左右馬が聡明な推理力で裏付けするという、いつものスキームで事件を解決。久さんは本当の孫と一緒に暮らすことになりました。

■怪しいキャラクターで緊張感を付加

 今回は名乗り出た孫のうちの1人、「徳田史郎」を名乗る男(濱尾ノリタカ)のキャラクター造形が奮っていました。こぎれいで立ち回りもよく、レディーの扱いも心得ている。そして、どうやら鹿乃子に「嘘を聞き分ける能力」らしきものがあることにも気づき始めます。結果的には「徳田」の嘘は見破られ、遁走することになるわけですが、この「徳田」の堂々とした立ち居振る舞いが左右馬と同等、あるいはそれ以上の切れ者であるという雰囲気を醸し出していて、得も言われぬ緊張感が生まれていました。

 そして去り際には、鹿乃子が嘘を見抜いたときに左右馬に送る合図をまねて、「今の僕の話は、(嘘か本当か)どっち?」と挑発的な態度を残していく。シンプルに、嘘をついていた人間が鹿乃子に噓を見破られただけというなんのひねりもないミステリーに、重厚な余韻を残すことに成功しています。

 この「徳田」の「嘘を聞き分ける能力を見抜く能力」が、今回限りの単純な謎解きに彩りを与えるエッセンスなのか、それとも鹿乃子の能力そのものに新たな解釈を与えるものなのか、それはわかりません。なぜわからないかといえば、原作を読んでいないからです。

 最初のほうは原作コミックと比較しながら見ていたんですが、途中でもういいやと思っちゃったんだよな。このドラマは十分に原作に敬意を払っているし、だいたいセリフも原作通りだし、原作とドラマの比較が単なる答え合わせにしかならないと感じたのです。要は、お話を知らない状態でドラマを見たいと思わされている。そのほうが楽しめそうだから。

『セクシー田中さん』(日本テレビ系)の件もあってコミックの実写化についてはナーバスにならざるを得ない時期に、そういう感触を視聴者に与える作品を作るというのは、これはなかなか大したドラマだなと思いますよ。

(文=どらまっ子AKIちゃん)