厚生労働省が発表した「令和元年度 人口動態統計(確定数)の状況」によると、2019年の離婚件数は20万8,496件となっています。皆さんの周りにも離婚を経験している友人・知人・同僚などがいるのではないでしょうか。今や離婚は身近な出来事。いつ自分が経験するかわかりません。そこでこの記事では、離婚のときに実際に生じうるお金の問題について、特にトラブルになりがちなことを解説していきます。

もはや離婚は「ありふれた日常」

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もはや離婚は「ありふれた日常」とでも言えるような状況になりつつあります。ちょっとしたすれ違いの蓄積により、いつの間にか離婚することになってしまうというリスクは誰にでもありうることでしょう。

離婚のリスクはお金のリスクでもあります。自分に限って離婚なんてことにはならないと思っている人も、離婚とお金のことに関しての知識は持っておいたほうが、いざというときのトラブルを回避できます。

夫婦共有の資産は離婚するときどうなる?

預金、土地、家などの資産は個人名義であることが多いと思われます。個人名義とはいえ、結婚後に建てた家、購入した車、預金、保険などは、お互いの協力がなければできなかったわけです。それらがすべて個人名義だからといって、離婚したらすべて名義人のものになるのは不平等だと言えるのではないでしょうか。

そこで、離婚をすることになるとまず出てくる話が「財産分与」の話です。離婚する際、結婚生活を送っている間に夫婦で協力して作り上げてきた財産を分けることを「精算的財産分与」と言います。

民法768条1項では「協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる」と定めています。しかし、すべての財産を分与する必要はありません。離婚時に問題となる夫婦の財産には以下の3つの種類があり、分与できるものとできないものがあります。

  1. 共有財産(分与できるもの)
  2. 特有財産(分与できないもの)
  3. 債務(分与に影響を与えるもの)

1.共有財産

共有財産は、財産の名義が誰かで決まるのではなく、実生活において共有して使われていたものが対象となります。預金、車、家、受給予定の退職金など、婚姻中に取得した財産にあたります。これらはすべて夫婦で取得したものと考えられ、財産分与の対象になります。

2.特有財産

特有財産は、婚姻前から所有していた家や土地、また婚姻中であっても相続によって取得した財産など、夫婦で協力して得られたもの以外のものです。これらは財産分与の対象にはなりません。しかし、結婚後に夫婦の協力で価値が上がった場合や、価値が維持された場合は、財産分与の対象になることがあります。

3.債務

債務とは借入金のことです。結婚生活を維持するための借入金は夫婦の債務として財産分与の対象になることがあります。ただし、個人がパチンコや競馬といったギャンブルなどを理由に生じた借入金は分与のする必要のないものとみなされます。