日本中では目まぐるしく、日々いろんなイベントがひらかれている。「そんな日本には、どのような土地があるのだろう」と、写真家として活動している私(仁科勝介)は、“平成の大合併”時に残っていた、旧市町村をすべて巡る旅に出た。その数は2000を超える。
今回、地域や自治体、企業の取り組み、新商品などの情報を発信するニュースサイト「ストレートプレス」で、それらを紹介する機会をいただいたので、写真を添えて連載をスタートした。
「ストレートプレス」内に登場するローカルな市町村と、関係があるかもしれない。
今回は、岩手県花巻市を写真とともに紹介する。
Vol.353/岩手県花巻市
旧石鳥谷町から南へ進み、花巻市街地へ。数多くのスポーツ選手を輩出している土地、というイメージもあるけれど、やはりぼくにとって花巻という土地は、宮沢賢治のふるさとというイメージがあまりに大きい。今回の旅でも、主に宮沢賢治記念館の周辺を訪れた。
なぜ宮沢賢治のことがとても好きなのだろう、ということもよく考える。彼が農村のために尽力したから。エスペラント語を大切にしていたから。言葉や思想が好きだから。いろいろあるとは思うけれど、わからない。でも、彼の生き方には、学ぶべきところがほんとうにたくさんある。
宮沢賢治記念館へ向かっている途中、セブンイレブンの前にはブドリとネリの像が建っていた。『グスコーブドリの伝記』という童話に登場するキャラクターだ。
また、宮沢賢治記念館の入口に着いたとき、夕方に差し掛かる頃の時間だけれど、クワガタが蟻に捕まりそうになっていた。周囲には豊かな森がある。そして、目が離せなくて、でも、どちらも自然の中で懸命に生きているのだから、変に助けるのはどうだろうか、と思案していたら、クワガタはかろうじて蟻の追跡を振り切り、晴れて自由の身となった。ただ、その反動か疲れか、逃げ去る途中でひっくり返ってしまい、そのときだけ助けてあげた。あのクワガタは、まだ、生きているだろうか。