11月26日、「オークラ東京」の平安の間で開かれる予定だった、野村証券が主催する「お取引先トップ感謝の会」が急遽中止になったという。

 そりゃそうだろう。2022年には、岡山支店で顧客から9千万円以上を騙し取ったとして、野村の社員2人が逮捕され、一人に懲役3年6カ月の有罪判決が出た。

 今年9月には、2021年に日本国債の先物取引で、グローバル・マーケッツ部門のトレーダーが不正に価格を操ったとして、金融庁が2176万円の課徴金納付命令を発した。

 さらに7月28日、凶悪事件が発生した。

 広島支店の営業マンだった梶原優星(29)が、顧客宅を訪問し、睡眠薬で眠らせて現金1800万円を奪い、家に火をつけて殺害しようとしたとして、強盗殺人未遂罪、現住建造物等放火罪で逮捕、起訴されたのだ。

 こうした不祥事が発生する背景には、厳しい成果主義があると野村の関係者はいうのだ。

「野村は近年、成果に基づき報酬を払う『ペイ・フォー・パフォーマンス』を徹底しています。入社三年目までは定期昇給していきますが、四年目からアソシエイトとなり、成果主義的な賃金体系に変わる。“鬼門”は七年目。出世が早い社員は、シニアアソシエイトに昇進し、二十代が終わる頃には年収一千万円が見えてくる。逆にそうでない人は給与が伸び悩む。そのため、若いうちから猛烈に追い込まれるのです」

 元社員のAがこう話している。

「私が教えられた野村の営業方法は、『ボケかけている小金持ち老人にとにかく投資させる』こと。自宅を訪ね、会話を重ね、親密な関係を築くフリをする――昭和時代のようなやり方です」

 社員には厳しいノルマを負わせ、社長の奥田健太郎(61)の年収は5億円だという。

 私なら、入社1年目に、アホらしくてこんな会社は辞めてしまうだろう。「株や」とはいいたくないが、時代が変わっても、内実は同じなのであろう。

 さて、証券界のトップがこうなら、金融界の雄である三菱UFJでは、顧客の貸金庫から10数億円を奪った行員が逮捕されるという大不祥事が起きていたのである。