「優しいご主人と可愛いお子さんがいて幸せね」。こんな言葉に、作り笑顔で返す主人公の志穂。『夫に「したくない」が言えない』(高尾 まこと KADOKAWA)は、したいのにできない、セックスの悩みを説いています。
◆たかがセックス、されどセックス
志穂の夫、健也は誠実でやさしくて子煩悩。出産後はしばらくセックスを控えていましたが、1年半後、求められるまま行為に及んでみると……。
志穂には、誰にも言えない秘密がありました。それは激痛ともいえる性交痛です。しかし、女性側が「したくない」状態でも、男性側はそうはいきません。
身体的な構造上でも、男性のほうがどうしても「したい」欲望は強くなります。「したくない」と拒否すれば好きな人が去っていくかもしれない。そんなジレンマに、志穂はずっと苦しんでいたのです。
◆どうして気持ちよくならないの?
志穂にはじめて彼ができたのは、大学2年の夏でした。初体験ももちろん彼。とはいえ、いざ挿入となると待っていたのは感激よりも激痛。ここまでは体験者も多いと思いますが、個人差が大きいとはいえ、じょじょに慣れて、気持ちいいという感覚が芽生えてくることが少なくないようです。
志穂の場合は「体がまっぷたつに裂ける」ほどの激痛ばかり。そんな折に、志穂は彼が友達に愚痴っているのを聞いてしまいます。「彼女が全然やらせてくれない。処女は面倒」という心無いひとことを。
女性としては、こういった男性同士の会話は理解できないですよね。男性にとっては軽口かもしれませんが、女性は立ちなおれないほど傷つくのです。特にセックスのコンプレックスは、“女性として何か欠陥があるのではないか”、と思い詰めるほど深刻です。
ほどなく彼の浮気が発覚し、別れることに。激痛と恐怖に苛まれた志穂のセックスに、トラウマまで加わった瞬間でした。