つみたてNISAは、税制優遇を受けながら、積立で投資信託を運用できる制度です。投資によって得られる利益が非課税になる制度ですが、年末調整や確定申告時にはどのように対応すればいいのでしょうか。つみたてNISAを利用するうえで知っておきたい手続きやデメリットについて整理します。
つみたてNISAは非課税なので年末調整は行わない
会社員は、当たり前ですが毎月給与をもらっていますよね。給与を支払う際、会社は支払う前に所得税などを引いた金額を給与として社員に支払っています。この天引きを源泉徴収と言います。
しかし源泉徴収した金額は大まかな金額が引かれているだけなので、本来納めなければならない税額とは異なることがほとんどです。そこで年末に最終的な調整を行うのが「年末調整」になります。納めた金額が多ければ還付され、少ない場合は追加で徴収されます。
つみたてNISAは非課税制度です。したがって投資による利益が出たとしても課税されることはなく、税金を支払う必要がありません。また、所得税額が変化することもないため年末調整を行う必要もありません。
確定申告は?
会社員など給与所得者の場合、確定申告はおもに投資や不動産運用、副業などによって利益が生じたときや、各種控除が適用されて所得税が還付されるときなどに行います。税額が変わるような出来事が起こったときは、2月15日頃から3月15日頃のあいだに忘れずに確定申告を行いましょう。
通常の投資ならば、利益から自動的に所得税や住民税が差し引かれる「源泉徴収ありの特定口座」以外で生じた利益については、確定申告をしなくてはいけません。しかし、つみたてNISAは非課税投資ができる制度なので、利益額に関わらず確定申告する必要はありません。
なお、つみたてNISAだけでなく、NISAやジュニアNISAも非課税投資を実施できる制度です。いずれも利益額に関わらず、年末調整や確定申告をする必要はありません。
つみたてNISAならではのデメリット
つみたてNISAは非課税で投資が行え、しかも年末調整や確定申告などの手続きも不要です。最大20年間利用できるので、上手に資産運用に活用したいものです。
しかし、つみたてNISAにもデメリットがあります。そこで、つみたてNISAを始める前に知っておきたい2つのデメリットを紹介します。
損益通算ができない
投資によって10万円の利益が生じたとしましょう。同じ年にほかの投資によって8万円の損失が生じたとすると、その年のトータルの利益は2万円のため、実際の課税対象額は2万円となります。この仕組みを「損益通算」といい、投資による損失を活かして節税することができます。
しかし、つみたてNISA口座で生じた損失に関しては、ほかの口座で生じた利益と損益通算することができません。
たとえば、つみたてNISAで8万円の損失が生じ、ほかの口座で10万円の利益が出たとしましょう。損益通算はできないので、つみたてNISA口座以外の口座で生じた利益10万円全額が課税対象となります。
なお、株式や投資信託等を売却して得た利益や配当金・分配金に関しては、20.315%の税金が生じ、源泉徴収されて支払われます。損益通算をすることで課税対象額が2万円になる場合、税金額は4,063円です。一方、つみたてNISAの口座で損失が生じて損益通算できない場合には課税対象額が10万円となり、税金額は2万315円と高額になります。
繰越控除ができない
損益通算してトータルの損益がマイナスだった場合は、翌年以降の利益から損失分を差し引いて、課税対象額を減らすことができます。この仕組みを「繰越控除」といい、損失を活かして以後3年間にわたって節税することが可能です。
たとえば、損益通算した上で100万円の損失があったとします。翌年の損益通算後の利益が70万円だとすると、全額が繰越控除の対象となり、利益に対して税金を支払う必要がありません。
さらにその翌年の利益が50万円だとすると、30万円は繰越控除の対象となるため、実質の課税対象額は20万円のみです。繰越控除は、損失が生じた年の翌年から3年間にわたって利益が損失と同額になるまで実施できます。
しかし、つみたてNISAでは繰越控除も利用できません。ほかの口座で繰越控除を適用するためには、損失を出した年(繰越控除が始まる原因となった年)から毎年確定申告をしていることが条件となります。忘れずに確定申告をすることで節税を実現しましょう。