他に借金がある、年収が極端に少ないなどよほどのマイナス要因がない限り、ほとんどの住宅ローンは購入価格全額の融資が可能。以前は取得価格の8割までに限定、残りは頭金を用意しなければ買えないことが多かったのだが、最近では頭金ゼロでも、全額融資を受けて買うこともが可能なっているのだ。

2割程度の頭金を用意している人が多い

しかし、実際にはほとんどの人が一定の頭金を用意して取得している。国土交通省が毎年実施している『住宅市場動向調査』の2017年度版によると、分譲マンションを買った人の平均価格は4,423万円で、うち1,729万円の頭金を用意している。住宅ローンは残りの2,694万円ということで、約4割が頭金で、約6割が住宅ローンになっている。分譲戸建、いわゆる建売住宅だとやや住宅ローンの比重が高くなる。取得価格は平均3,810万円で、うち1,027万円が頭金、残り2,783万円の住宅ローンを利用している。頭金割合は約27.0%になる。

このデータは、初めて取得する人だけではなく、買い替えの人も含まれているので、初めて取得する人だけに限定すると、頭金割合はもう少し低くなるだろう。それでも、おおむね2割からそれ以上の頭金を用意しているケースが多いのではないだろうか。

頭金が多ければ住宅ローン金利が低くなる

これだけの頭金を用意すれば、その分借入額が減って余裕をもって返済できるようになる可能性が高まる。と同時に、注目しておきたいのは頭金が多いとその分、住宅ローンの利用にも有利になるというメリットがあるということだ。どういうことなのか――。

確率論からすれば、頭金が多く、借入額割合が低いほどローン延滞、その先のローン破たんなどの事故率が低くなる。金融機関からすれば優良顧客になるわけだから、優遇措置を講じてでも顧客になってほしいところだけに、頭金をたくさん持っている人の金利は低くするという優遇策が実施されている。

メガバンクなどのホームページをみると、たとえば、固定期間選択型の固定10年の金利について「0.80%~1.15%」などと幅を持たせて記載されているのがふつう。このうち、頭金割合が高く、信用力のある人については最優遇金利の0.80%が適用され、頭金が少なく、信用力の低い人は1.15%になってしまう。頭金割合によって、ハッキリと差を付けられるわけだ。

適用金利が「0.2%~0.3%」異なることもある

民間金融機関ではそうした適用金利に関する規定は公表していないが、頭金が2割以上あれば最優遇金利が適用され、2割未満だとそこから0.2%~0.3%高い金利というケースが多いといわれている。

住宅ローンの借入れを希望する人のなかには、ホームページの表示のなかでも一番低い金利、最優遇金利が適用されると勝手に思い込んでいる人が多く、審査の結果、最優遇金利よりかなり高い金利を提示されてガッカリすることがある。

その判断の重要な基準になっているのが頭金の割合なのだ。富裕層、お金持ち優遇といった印象もあるが、銀行もビジネスなのだから、ローン事故の確率が低そうな給料や年収が低い人より、高額所得層、お金持ち、富裕層を優遇するのは資本の論理からして当然のことだろう。

賢い消費者であれば、実際にはさほどの富裕層といえないまでも、それなりの頭金を用意して、最優遇金利を利用できるようにしておきたいところだ。

頭金の多寡が約275万円の差につながる

この適用金利の差、けっこう影響が大きい。完済までに数百万円の負担差が発生することもあるのだ。たとえば、同じ3,000万円の借入額でも、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合、固定期間選択型の固定10年の最優遇金利の0.80%の金利だと毎月返済額は8万1,918円だが、頭金なしで0.2%高い1.00%になると8万4,685円に増える。毎月2,767円、年間で約3.3万円、10年間だと約33万円の差になる。仮に、このまま35年間同じ金利が続いたとすれば、約16万円もの差になる。

民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して実施されているフラット35という住宅ローンがある。完済時まで契約時の金利が変わらない全期間固定金利型だから、借入後に返済額が増えるリスクのない、比較的安心して利用できるローンで、賢い消費者の多くが利用している。その金利にも頭金割合による違いがある。

返済期間35年の場合、頭金が1割以上あれば2018年2月の金利は1.40%だが、1割未満だと1.84%に上がってしまう。同じように3,000万円の借入額だと、1.40%なら9万0,392円だが、1.84%だと9万6,933円に増える。毎月6,541円、年間で8万円近く、35年間の合計では約275万円もの差になる。これだけの差があると分かれば、シッカリと頭金を用意して買ったほうが得策という気持ちになるのではないだろうか。