政(まつりごと)と貴族の権力争いに振り回されながら、理想と現実とのギャップに苦しみ続けた一条天皇。第15回で初登場した際には、圧倒的美しさと龍笛の音色で一気に視聴者の心を掴みます。これが大河ドラマ初の、本人が吹いた生音だったというから驚きです。以降も、品位ある美しさのなかに、孤独、傲慢(ごうまん)や葛藤も醸し出し、苦悩の生涯を見事に演じ切りました。

◆弱腰リーマンから恋愛体質のチャラ男まで、役の幅が広すぎる

一方、放送中のドラマ『無能の鷹』で演じている新入社員の鶸田は、努力家で有能ながらも、常に弱腰で、自信のなさが全面に出てしまっています。「そんな美しい顔面で、そんな馬鹿な!」とさえ思わせないほど、見るからに“デキなさそう”な佇まい。物語にしっかりと馴染んでいます。

『無能の鷹』
画像:テレビ朝日『無能の鷹』公式サイトより
同じ新人なのに、主人公の鷹野(菜々緒)とタッグを組んで世話係をすることになった鶸田。そんな鷹野と鶸田の対比、そして周囲を巻き込んだ掛け合いが面白い本作。死んだ魚のような目をしたり、諦念(ていねん)の表情をしたり、豊かな“ダメ”な受けの表情を繰り広げる塩野の功績も大きいでしょう。

FODで今年の7月に配信され、この秋地上波でも放送されたドラマ『REAL 恋愛殺人捜査班』での役柄も、なかなか。実在した殺人事件をモチーフにした恋愛がらみの3つの事件を描いた本作で、塩野は野村周平とW主演。根っからの恋愛体質で、事件の証人にまで手を出すチャラ~い刑事を演じています。凄まじい軽薄さに驚かされました。

◆次世代のカメレオン俳優として「期待大」なワケ

さらに、大ヒット映画の続編となるドラマ版『ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』(WOWOW)にも、元はヤクザの一味で賭場の用心棒だった青年・奥山夏太郎(おくやま かんたろう)役で出演中。土方歳三(舘ひろし)と出会い、彼に傾倒していく男を演じています。