その理由は、遺言書に沿って相続手続きを進めるときに判明した。
「遺言書にある財産一覧には、株についてまったく触れられていなかったんです。夫と二等分したのは不動産と預貯金のみ。おそらく株は義父母が生きている間に売ったのか、名義を義姉に変更するかしたのだと思います。義姉がこっそりやったのか、義父が夫に内緒でやったのかはわかりませんが。私でも知っている大企業の株がいくつもあったので、相当の金額だったと思います」
株のことを知っているのは、柴田さんと娘だけだ。確証のないことを伝えて、姉弟の仲にヒビが入っても……と思い、夫には何も言っていない。
親の愛をお金ではかる?
「そもそも、嫁である私に相続する権利はないですしね」
そう苦笑しつつも、「これまでの介護費用は一切請求せず、遺産はきちんと等分したからね」と堂々としている義姉を見ると、「実は知ってるんですよ」と言いたくなる。意地悪な気持ちが沸き上がるのを抑えられないのだ。
「きょうだいって、こうして親の愛をお金に変えて、どちらが愛されているか試している、いや、親の愛を奪い合っているのかもしれませんね」
柴田さん自身、結婚した息子より娘に多くのお金を渡しているという。息子にはもちろん内緒だ。
「私たちの老後のことを考えると、結局娘を頼りにすることになると思いますので」
「お兄ちゃんには内緒」と言ってお小遣いを渡す自分が、義姉と重なる柴田さんだ。