“「ヨロヨロ」と生き、「ドタリ」と倒れ、誰かの世話になって生き続ける”
――『百まで生きる覚悟』春日キスヨ(光文社)
そんな「ヨロヨロ・ドタリ」期を迎えた老親と、家族はどう向き合っていくのか考えるシリーズ。
目次
・遺産はきっちり二等分。表面上は――
・遺言書の財産一覧に、株がない
・親の愛をお金ではかる?
遺産はきっちり二等分。公平かつ合理的なはずだったが……
柴田弘美さん(仮名・61)は、先ごろ夫の両親が相ついで亡くなった。几帳面だった義父が遺言書を残していたので、相続の手続きはスムーズに進んだ。
表面上は――。
遺言書の執行人は夫の姉だった。葬儀費用などを差し引いて、預貯金や不動産はきっちり義姉と夫が二等分することになっていた。
加えて、今後義父母の年忌法要にもかなりの金額がかかることが見込まれるので、その分は別に取っておき、そこからお寺へのお布施やお斎(とき)代を支払う、と義姉は公平かつ合理的に采配してくれた。
「義父母の入退院時の手続きや施設とのやりとりなど、介護のキーパーソンとなった義姉のほうが時間も手間もお金もかかったはずなのに、その分を請求したり、不平を言ったりすることもなく、淡々と事務的に進めてくれて感謝しています」
柴田さんはそう言うが、どこかスッキリしない表情だ。それはなぜなのか。
遺言書の財産一覧に、株がない
「実は、義父母がそれぞれ入院したり、施設に入っていたりしたときに、義父母のマンションの大規模修繕がはじまって、仕事で都合がつかなかった夫と義姉にかわって、私と娘が留守番がわりに数日滞在したことがあったんです。
そのときに、部屋を少し片づけておこうとしたところ、義姉を執行人に指定した遺言書があるのを見つけました。それはいいのですが、遺言書とはまた別のところに、株券が相当あるのも発見したんです。通帳類やハンコは遺言書と一緒にあったのに、株券は別の場所にあったのが不思議でした。きちんとした義父にしては珍しいな、と」