また、非常によくあるのが、チーム内のバランスで攻めるやり方。日本ハム時代の大谷翔平がそうでしたが、『中田翔が◯円なのに、お前にそれ以上は出せない』という決め方もあります」(在京球団関係者)

 中にはチームメイトのやっかみを避けるため、実際より大幅に低い額をマスコミに言う選手もいるとか。選手は個人事業主なのに、都合が悪くなると“チームの一員”として扱われることもあるのは辛いところだ。しかし、交渉の余地がある選手はまだマシだ。

「若手や2軍選手は契約交渉なんてありません。まとめて呼び出されて、金額が記された契約書を提示されて、流れ作業でハンコを押すだけ。拒めばクビです。交渉ができるのは準レギュラークラスから。これが主力になると下交渉があって、事前におおまかな額が提示され、不満があれば複数年やインセンティブなども含めて話し合いを行います。

近年のトレンドは複数年ですが、過去にはMVP級に活躍した当時阪神の矢野燿大が契約の関係で減俸となり、モメたことがありました。こうなると複数年契約も考えものですね」(同上)

 必要とされる人物が強気に出られるのはどの世界も同じ。ただ、ここでも“トラップ”は仕掛けられている。

「多くの一流選手が口を揃えて話すのが、『いくら欲しいのか?』という誘い水の危険性です。ここでうっかり具体的な金額を言ってしまった場合、それが先方の想定額より下だったら、そこで話はまとまってしまう。一方、あまりに高い額を言えば、身の程知らずだと思われてしまう。年俸交渉には“ブチギレ型”“悠然型”“じっくり型”“理路整然型”など、いろいろなタイプがいますが、こちらから額を言わないことだけは、どのタイプにも共通する鉄則です。押し引きの加減が絶妙だった故・星野仙一氏の交渉ぶりは、今や球界の伝説です」(前出・ベテラン野球ライター)

 選手側は代理人の利用を望んでいるが、球団側との主張は平行線。そんな状況も、トップ選手の海外流出を招いているのかもしれない。