森:でも兄貴は、本当はそれほどオートレースごっこを好きじゃなかったんじゃないかな。

 僕のために付き合ってくれていたんじゃないかと思います。なんども転校していて、なかなか友達もできないなかで、兄貴が一番の友達でした。

 学校の子たちに「オートレースごっこしようぜ」なんて言っても、実際にレースを観たこともないし、理解もしてくれない。でも兄貴は一緒に観たことがあったし。いろいろと付き合ってくれましたね。

 いまでも本当に仲がいいんです。顔も似てるし体型も一緒だし。歩いてる姿を後ろから見たら見分けがつかないんじゃないかな。実際、高校のときなんか、同級生が兄貴に向かって、僕の名前を呼ぶことが何度もありましたからね。

◆「ファンがいなくても」って。それは間違いだった

森且行さん
――ファンの存在についても聞かせてください。本編にもリハビリ中にファンから届いた応援の手紙などが映し出されていました。ファンに対しての気持ちに変化はありますか?

森:芸能界にいたときは、応援してもらうのがすごく嬉しくて、コンサートでうちわを持ってくれている姿なんかを見ると、最高に気分が良くて。でもオートレースって、応援してもらっても結局は自分が勝たなかったら賞金も入ってこない。

 だからレーサーになったとき、ちょっと生意気だったのかな、一度、何かのインタビューで言っちゃったんです。「ファンがいなくても、強くなればそれでいい」って。

 でもそれって、やっぱり全然間違いで。ファンがいてくれないと力も出ない。応援してくれる人がいないと、速く走れないんです。

――当時の森さんにとっては、自分を奮い立たせようとする言葉だったんでしょうね。

森:そうですね。強くなれば、ファンは付いてきてくれるだろうという考えだったんだと思います。今思うと、ほんと生意気なことを言ったなと。

――それでもファンはついてきてくれた。

森:そう、ありがたいことに。ケガして2年3か月も走ってなかったら、やっぱりちょっとは気持ちも薄れてくるじゃないですか。でも「待ってますよ」ってみんな言ってくれて。感謝しかないです。