僕たちの場合、エンジンが人間を運んでくれるわけだし。歩けるんだったら、大丈夫だと。
退院してからは自転車に乗りまくりました。立ち漕ぎしてね。立ち漕ぎすると、どうしてもバランスを崩してグラッとなるんですよね。自分が使える神経と、使えない神経があるので。そこを探りながら、とにかく自転車をたくさん漕ぎました。
◆命も危ぶまれた大ケガから奇跡の復帰。1着を飾るも涙は見せず
――2023年4月6日、復帰戦を1着で飾りました。日本選手権には涙がありましたが、復帰の1着の際は笑顔でした。次を見据えていたからでしょうか。
森:日本選手権で僕はレースで初めて泣いて、もう「二度と泣くものか」と心に決めていたんです。「復帰しても、絶対泣かないぞ」と。自分のことでは泣かない、絶対に我慢しようと。そう決めていたんです。
――そうだったんですね。
森:でも泣きそうでしたよ。堪えました。ここで泣いたら次がないと思って。
復帰戦って、特別なものだけれど、優勝ではないし、ここで泣くようなメンタルだったら先には行けない。グッとこらえて。
オーバル(レース場)に帰ってこれた瞬間ではあったので、ヘルメットを脱ぐまでは本当にやばかったですけど、脱いだ瞬間、目をパシパシっとやって涙が出ないようにしてました(笑)
◆仲良しの兄、「弟、全然ダメじゃん」と周囲に言われたことも
――本編には森さんの兄・久典さんもたくさん登場しています。「弟はアイドルとオートレーサー、両方の夢を叶えてくれた」と話していますね。
森:兄貴はね、めちゃくちゃ僕に優しいんです。
でも僕の成績が悪いときには、兄貴も「弟何やってんの」「弟、全然ダメじゃん」みたいなことを周りから結構言われたらしいんです。だから兄貴や兄貴の友達、周りのためにも日本一にならなきゃと思っていました。
――幼少期のご苦労も明かされます。おふたりの思い出の公園にも行かれていました。一緒にオートレースごっこをしていたと。