今作では、“決定的な出来事”が起こるまでのしばらくの間、演出上、見せられている映像が実際にすべて起きたことなのか、リリーのトラウマによって強調されたイマジネーションが混ざったものなのかを100%は判断できない、つまり邪(よこしま)な目で見れば「リリーがトラウマで被害妄想の幻覚を見ているのではないか」と解釈できなくもない瞬間がいくつか存在する。「事実なのか?誇張なのか?」という疑問が一旦湧くところに、リアルがある。

それこそが、DV被害者が相手よりも自分を責めてしまったり、誰にも信じてもらえないのではないかと疑心暗鬼に陥ったり、自ら都合のいい記憶に書き換えてしまったりする、現実のDV問題を取り巻く葛藤・苦悩を形成している要素のひとつだろう。

ただ「DVの被害に遭いました。悪い男性を攻撃しましょう」とストレートかつシンプルな作風にするのではなく、複雑なリアルや、男性側の心の歪みを生んだ原因なども盛り込み、現実に向き合ったこと。それを監督兼出演の男性ジャスティン・バルドーニと、主演の女性ブレイク・ライブリーらが男女で作り上げたこと。ここに今作の価値・重要性がある。

(画像提供:ソニー ピクチャーズ)

(画像提供:ソニー ピクチャーズ)

女性に共感させるだけでなく、男性こそ観るべき作品として仕上がった『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』は11月22日(金)より全国の映画館で公開。今作を見て世の中の訴えや、訴えられてすらいない多くの可能性がどう見えてくるか、ぜひ多くの人々に感じていただきたい。

作品情報

タイトル:『ふたりで終わらせる/IT ENDS WITH US』
原題:IT ENDS WITH US
日本公開:11月22日(金)より全国の映画館で公開
US公開:2024年8月9日
監督:ジャスティン・バルドーニ(『ファイブ・フィート・アパート』)
キャスト:ブレイク・ライブリー、ジャスティン・バルドーニ、ジェニー・スレイト、ブランドン・スクレナー
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント