◆セクシャリティに関係ない、普遍的な悩みや人生の転機

「気になっていたけど、まだ観たことがない」「テレビドラマ版しか観てない」。そんな方でも、絶対に楽しめる! のが『きのう何食べた?』通称「何食べ」。夏の疲れが溜まったこの時期だからこそ、その疲れをほっこり癒やすためにも観てほしいドラマです。

西島秀俊演じる、弁護士のシロさんこと筧史朗(かけい・しろう)と、内野聖陽演じる美容師・ケンジこと矢吹賢二(やぶき・けんじ)。恋人として暮らすふたりの日常を、食卓を中心に描いています。

本作は男性同士のカップルが主人公ですが、描かれる悩みや人生の転機は、セクシャリティに関わらず、誰もが共感できるものばかり。パートナーを両親に紹介するか否か、友人に恋愛感情を抱かれたパートナーが浮気するのではないか、両親の病気や介護、自分自身の加齢や職場での葛藤……。主演の西島・内野両名がそれぞれのキャラクターが抱える心の機微を繊細に表現し、切なくも温かな気持ちにさせてくれるのです。

◆言わずもがな、役作りが秀逸すぎる主演のふたり

記事を書くにあたりseason1から観返しましたが、改めてふたりの徹底した役作りと表現力の高さを感じました。彼らの絆が日々の暮らしを通して徐々に深まっていることや、互いや周囲の影響による変化が随所に見られます。

よしながふみの原作と安達奈緒子による脚本の力ももちろんありますが、彼らの仕草や表情が秀逸だからこそ、シロさんもケンジも私たちと同じ世界線に存在しているかのような錯覚に陥るのです。西島×内野の競演だけでも、本作を観る価値があります。